夜の女たち

劇場公開日:

解説

「情炎(1947)」「女優(1947)」の原作者久板栄二郎の『女性祭』(日本小説所載)を依田義賢が脚色し「女優須磨子の恋」につぐ溝口健二の監督で、カメラは杉山公平。主演は「女優須磨子の恋」「不死鳥」の田中絹代、銀幕を引退していた高杉早苗が数年振りで特別出演する外、東童の角田富江の映画初出演、それに宮本民平、槙芙佐子らが助演する。

1948年製作/74分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1948年5月28日

ストーリー

敗戦後の大阪の街は、未帰還の夫を待つ大和田和子に冷たかった。今日も、幼児結核のわが子浩に牛乳を飲ませるため着物を売りに行くと、店のおかみは「金が欲しいおまんのやったら……」とめかけをすすめるのだ。看護のかいもなく浩は死んだ。折も折、夫の戦死が戦友平田によって伝えられた。和子は平田の社長栗山の秘書となり、大和田家を出てアパートに住んだ。和子の実妹君島夏子は北朝鮮から引揚げてダンサーをしながら姉を探していたが、偶然心斎橋で出会い姉妹は手を取り合って喜んだ。夏子は姉のアパートに身を寄せた。ところが栗山という男は阿片の密輸入業者で、色魔だった。身をまかせてた女は弱い。和子は栗山のいいなりになっていたが、ある日、夏子と栗山のみだらな姿を見て憤怒の末はヤミの女になって男に復しゅうすることを決心し、今では姉御にまでなっていた。夏子は出奔した姉を探しに夜の心斎橋筋をさまよい歩いている内、ヤミの女の検索に引掛り病院に送られた。「私はそんな女ではない」と叫ぶ彼女に「うるさいね」と怒鳴った女がある。それは和子だった。診断の結果夏子は栗山から性病を移されお腹には彼の子を宿していることが判った。和子は妹を労わり、栗山には見向きもせず婦人ホームに連れて行き安息の日を与えた。人生の苦悩を考えながら夜の街に帰って来た和子は、仲間のヤミの女にいじめられている娘の顔を見て思わず泣き出した。娘は貧乏をきらって家を飛び出した義妹の久美子だった。--世相はきびしく辛いのだ--和子はうるんだひとみで街のネオンを見上げた。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0戦後の荒廃の世に虐げられた女性を厳しく描いた溝口健二監督の力作

2021年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
Gustav

5.0戦後すぐの混乱の中での悲惨な女性の運命 75年も昔の21世紀とは隔絶した物語? 果たしてそうでしょうか?

2020年4月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

田中絹代のファンなら衝撃を受けるかと思います
冒頭こそ彼女らしい貞淑な主婦の姿で登場します
しかし中盤からは予想も想像もできない、観たくなかった娼婦の姿形、言葉遣い、物腰で登場します
彼女とは思えない程です
西鶴一代女の零落した姿形を演じた彼女よりも衝撃を受けました

1948年の大阪
復興は進みつつも、焼け跡も、人々の心にも戦後の混乱がまだまだ残されている光景が舞台です
彼女の演じる夜の女とはパンパンのことです
娼婦よりも街娼が正確な表現です
8年後に溝口監督が撮る赤線地帯の娼婦なぞ可愛いいもので、本作に比べれば綺麗な世界というべきです

これでもかとばかりに壮絶な女性の運命が描かれます
殊にパンパン狩りで収容された性病科の病院のシーンは圧巻です
パンパンの登場する映画は数あれど、これほどまでに現実の姿をリアリズムで撮った映画を観たことは有りません
もちろん生まれる以前の物語ですから、現実なぞ見たことも経験したこともないのですが、その映像は現実を切り取っているとハッキリ感じ取ることができます
ロッセリーニ監督のネオリアリズモと通底するものです

戦後すぐの混乱の中での悲惨な女性の運命
タイトルバックとエンディングにはベートーベンの運命をアレンジした音楽が使われています

75年も昔の21世紀とは隔絶した物語?
果たしてそうでしょうか?

ある有名お笑い芸人がラジオの自分の番組で軽口を叩いたことが物議を醸しているというニュースを昨日見ました
コロナ禍で職を失ったり、生活が苦しくなる人がでています
だから、しばらくすると綺麗な女性が風俗嬢に沢山なるからこれから楽しみだとかの心無い軽口をしたそうです
非難されて当然でしょう

これを発言した本人は冗談のつもりで軽く口から発したのでしょう
しかし彼にそうさせた精神は本作で溝口監督がテーマの中心に据えて見つめたものと言えます

溝口監督が戦前の祇園の姉妹や、そして戦後すぐの本作で描こうとしたことは、何十年も経っていても、21世紀においてもなお変わりはしないのだということを白日にさらしているのだと思います

そのお笑い芸人には、本作を観ることを心からお勧めしたいと思います

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あき240

他のユーザーは「夜の女たち」以外にこんな作品をCheck-inしています。