鑓の権三のレビュー・感想・評価
全7件を表示
昭和のプロたちの全員集合
近松戯曲の登場人物は、当時の社会情勢からは自然なんだろうけど、すべてが歯がゆくてどうも好きになれない。ストーリ・ドラマは置いといて、こんなことを感じた。
古典的な封建世界を竹満徹は、三味線の音色で表現する。大監督、大女優に、撮影宮川一夫、美術西岡善信といったその道の匠たち。障子越しの二人の様子や、格子窓の外から見た二人の会話シーンとかハッとする様式美。日本映画を知ったスタッフ・キャストへの安心感かなあ。
当時、ディスカバージャパンという言葉が残っていたか微妙だけど、西日本を代表する古典情緒を醸し出す町並みや名所旧跡。「あれ、ここは?」と訪れて既視感ある風情。
というわけで、どこか懐かしく感じる作品だった。
ジャパーン
郷ひろみ主演の時代劇なんてあったんだ。 濡れ衣の不義が真の不義に。...
筋書きが色恋物
モテ男の失敗
昔、映画館で見たなー。BS日テレで放送したので、何十年ぶりに再見。
容姿端麗、文武両道、流行り歌になっちゃうくらい、いい男。そんな権三はモテモテ。同僚の妹に迫られ、結婚の約束をカル〜くする。お役目奪取を目論み、引き換えに縁談を持ちかけられれば、易々と受けてしまう。節操ないなぁ。二股はイカンよ。
本当は不義密通してはいなかったが、言い訳できない状況になってしまい、逃亡。しかし、最後は自ら討たれる。きちんと筋を通せば、こんなことにならなかったのに。世の中を甘く見てたな。
権三を郷ひろみ、良き妻・母であるおさいを岩下志麻、権三に恋焦がれる娘お雪を田中美佐子、おさいに横恋慕する、お雪の兄・伴之氶を火野正平が演じる。
女優は2人ともねっとりしてて良かった。暗い炎がチラチラするような目で、権三にロックオンするお雪。もうどうにも止まらない。おさいは元々、権三が好みだったから、2人で逃避行するうちに、権三沼にズブズブはまっていく。どうせ誤解されてるんだから、本当にしちゃえばいいじゃあーりませんか。
火野正平が嫌らしさ満点。郷ひろみは姿よく、動きにキレがあって、まさに男盛り。
おさいが15歳の娘の髪を整えるシーンは、情感があった。この映画を見た後に、人形浄瑠璃も観劇したのだが、同じ場面があり、娘への細やかな愛が表現されていた。権三に近寄られなければ、子どもと離れずに済んだのにねぇ。つくづく、軽薄の人とは交わるべからず。
BS日テレ木曜時代劇にて。
二人の情感のほとばしりが感じられず…
各登場人物には何の救いも感じられず、
なんとも後味の悪い鑑賞となった。
ある意味、封建時代における理不尽な
悲劇物でもあるのだろうが、
例えば小林正樹監督の「切腹」のような
そんな強い時代感も得られず、
全ての不幸が
おさゐ(岩下志麻)の個人的な対応の拙さが
原因と感じるばかりだった。
時代性に迫るのでないなら、
同じ近松物の映画化作品の
「心中天網島」や「曾根崎心中」のように、
もう少し主人公二人の情感を
濃厚に描くべきだったと思う。
この作品では中盤での、娘に対する
「そなたがいやなら母が夫に持ちたい位」
とのおさゐの発言だけでは、
悲劇に至る伏線になり得ていない。
ここは作品の冒頭から二人の情感の伏線を
張り巡らせるべきで、
原作がどうなのかは分からないが、
せめて演出としては描くべきでは。
そうでなければ鑑賞する立場としては、
二人への共感は生まれ難く、
作品への評価にも影響したような気がする。
全7件を表示