「”絵金”絵画の実写化作品」闇の中の魑魅魍魎 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
”絵金”絵画の実写化作品
「絵金」の愛称で呼ばれる幕末土佐の絵師・金蔵のお話でした。とにかくエログロの極致を行く作品で、裸は出て来るは人が死ぬ場面も多数。特に人が死ぬシーンはバラエティ豊かで、切腹、自害、心中、斬り合いなどなど、まるでカタログの如し。さらには色彩が極めて鮮烈で、真っ赤な鮮血がドバっと出て来る演出は効果絶大というか過剰とも思われるほどでした。ただこうした絵柄は、何れも絵金の絵画を実写化することを目的としたようで、これは偶然なのかどうかは分かりませんが、同時期に六本木のサントリー美術館で開催されていた「幕末土佐の天才絵師 絵金」展で、実際に絵金の作品群を見るとよく理解できました。
こうしたエログロなシーンが特徴の作品でしたが、それ以外にもいわゆる放送禁止用語がふんだんに使われているのも特徴でした。現在なら作中でほぼ使われない言葉が使われていて、さらにはこれを編集せずにそのまま上映したのも驚きでした。
また内容的に面白かったのは、絵金と友人の土佐藩士(江守徹)の会話。脱藩して討幕を目指そうとする藩士と、そもそも権力とか権威に興味がない絵金の会話は、学生運動に身を投じた若者のよう。やはり1971年制作の作品なので、この辺りは時代背景を映しているのだろうと思ったところでした。
俳優陣については、何と言っても絵金を演じた麿赤児が凄かった。今でも迫力がありつつも何処か妖怪チックな役柄を演ずることが多いですが、当時27~28歳だった若さがあるだけに、躍動感が半端ありませんでした。因みにチラシの妖怪のような化粧を施した絵金の姿は、最終盤になって出て来るだけでした。要は自分の作品中に描かれた人物が、絵金に憑依したってことなんでしょう。
いずれにしても、映画と展覧会をセットで観ると、面白さ倍増でした。
そんな訳で、本作の評価は★4.0とします。
