劇場公開日 1954年1月15日

「『雪国』しか読んだことがありません。」山の音 TRINITY:The Righthanded Devilさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0『雪国』しか読んだことがありません。

2025年2月2日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

 ノーベル賞作家、川端康成の原作小説を映画化した人気女優・原節子の主演作品。

 小説は読んでいないが、いろいろと違いがあるらしい。
 戦争の傷跡を痛々しく引きずる日本という原作の重要なテーマはほとんど登場せず、修一が復員兵ゆえのトラウマを抱えると示唆する場面もない。なので、里帰りしてきた房子の自己チューな性格も含め、親の躾が悪かったせいとしか思えない。
 原作や川端のファンは内容に不満が募るだろうし、原作を知らなくても釈然としない作品。『山の音』というタイトルの意味も映画を観ただけでは伝わらない。

 尾形信吾を演じた山村聰は自分が知ってる堂々とした声でなく、老けメイクをしても違和感を感じる。それ以上に違和感があるのが、実年齢が一つしか違わない上原謙の父親役というキャスティング。
 敗戦にまつわる原作の要素を割愛したことも含めて理由が知りたい。

 夫・修一の不倫と冷淡さに耐え続ける菊子がただただ健気。トラウマを抱える復員兵という前提無視を了解の上での演技だとしたら、上原の身勝手振りも秀逸。

『映画と小説の密な関係-文芸作品特集』にて鑑賞。
 於:京都文化博物館フィルムシアター

TRINITY:The Righthanded Devil