野獣死すべし(1959)のレビュー・感想・評価
全3件を表示
若き仲代達矢さんの最高傑作
見たのは1年以上前になるが
仲代達矢さん追悼ということで
某SNSに書いた感想を基にレビュー書いてみる
大筋の流れは原作通り
ただし現金輸送車襲撃やサイレンサー製作は無し
(まあよく考えてみればダイナマイト爆発させた時点でサイレンサー使う意味無いし)
だから話の流れとしては
刑事殺して拳銃や警察手帳等奪う
↓
悪徳刑事に化けて国際賭博団のテラ銭を強奪
↓
街で出会った賭博団の用心棒を射殺
↓
大学の入学金強奪
↓
強奪した金持って留学という形で海外逃亡
となる
あと原作にはいないオリキャラ多数
原作はほぼ伊達邦彦(仲代達矢)の視点で描かれてたが
事件を捜査する刑事(小泉博と東野英治郎)や付き合ってる女(団令子)がいることで
話が重層的に
拳銃の種類が原作と微妙に違う
防衛大から盗み出した拳銃はS&Wの22口径
(原作はコルトハンツマン)
S&Wなら22口径の自動拳銃も有るだろうけど
あまり有名なモデルは聞かない
刑事(瀬良明)から奪ったのがリボルバー
(原作はモーゼルHsc)
普通の警官用の38口径だろうか?
そして用心棒(佐藤允)から奪ったのがモーゼルHsc
(原作はS&WのM1917リボルバー)
用心棒は拳銃で頭殴られて頭蓋骨陥没だけで済んだ
原作に比べれば被害少ない
原作は胃が裂けて喉潰れて歯が欠けて頭蓋骨陥没だし
入学金強奪の共犯者(武内亨)が原作より凶暴
原作は援護したとなってるけど撃ったか定かでないが
映画では4人ぐらい射殺してる
原作では大学の建物にダイナマイト投げ込んだだけだが
映画ではわざわざ翻訳の仕事もらってた教授(中村伸郎)と他二人がいるとこに
投げ込んで爆殺している
難点を言えば
酒場で花売りの婆さん(三好栄子)に歌って踊らせるシーン
(「ほ~しは何でも知っている~♪」を延々と繰り返し何か回ってる)
邦彦の異常性を演出したかったんだろうけど
あれは要らなかったんじゃないかな
あんなことしたら客に顔覚えられまくるし
でもそれが事件追ってる刑事との接点になるから
あれ無いと捕まえるギリギリのとこまで邦彦に近付けなかったかも
当時27歳の仲代さんの
冷酷さと狂気の入り混じり
明らかに犯罪そのものを楽しんでる目と表情
これは他所の作品ではなかなか見られない
一見の価値あり
最後に余談
原作の大藪春彦先生がカメオ出演してる
前述のシーンかは失念したが
酒場のシーンで客の役で
黒澤明がパクった?
絶対に感情移入できないはずの主人公に感情移入して見れる。一体なぜなのか全くわからない 。この男、何が目的でやってるのかもわからない。 なのに面白い。確か・・・ 原作はこういう話じゃなかったような・・・。多分これは脚本を読んでも全く面白くないでしょう。 こういう映画がいい映画なんだと思うんですよ。 つまらない 脚本から面白い映画を作る。 それこそ映画の醍醐味。参った。
シャープな陰影の白黒画像。地味な音楽の使い方。地味なカメラワーク。そして 何と言っても全てが 仲代達也。・・って感じですか
これの翌年 公開された 黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」は これのパクリ・・いやマネでしょう
原作は主人公がどうしてこういう人間になったかという経緯とか 動悸がしっかり描かれてるが この映画にはない。 わざとそこんところをカットしてサイコホラー映画的に不気味な人物として描き出した。それが成功している。 おそらく見ているものはこの主人公にではなく刑事の方に感情移入して見ているのだろう
一番印象に残っているのは 握手のシーンだ。相手に対する敵意 と反感 それと同時に何か 同じ敵と戦っているという 戦友のような・・・ そんなものをそこから 感じた。 迫力のある素晴らしいシーンだった
一方 黒澤明の「悪いやつほどよく眠る」は 脚本家が5人も集まって書いてるというのに どうしようもない。 くだらないファミリー ドラマになっちゃってるし ターゲットのキャラクターが違うというのに同じ方法を繰り返し使っている。 全くもって馬鹿げている。小津安二郎 にこき下ろされたのはその辺だと思う。 しかし一方で 彼らは素晴らしい脚本もいくつも成功させている。いい脚本が書けるかどうか っていうのは本当に不思議なものだ
須川栄三
全3件を表示


