「気まずいラストカット」893愚連隊 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
気まずいラストカット
今でいう半グレみたいな悪ガキたち(愚連隊)が知略だけを頼りにヤクザを出し抜こうとする映画。ヤクザ賛美の時代感の中でこういうものが出てきたのは興味深い。悪ガキたちの一世一代の大勝負が『スティング』的な大成功にもアメリカンニューシネマ的な破滅美にも帰着せず、全てを哄笑するかのような滑稽譚で締め括られるのもよかった。この気まずさは山下敦弘の初期作品にも通ずるところがあるかもしれない。
あとは印象的なショットが多かった。愚連隊が雨の日にヤクを積んだトラックを襲撃するシーンでは、街を浸す霧のせいで画面の端がぼやけてなんとも言えない不気味なアトモスフィアが生じていたし、作戦失敗後に京都市街の橋の上で愚連隊たちがつまらなそうにタバコをふかすシーンもよかった。極道という虚勢を取り払われた男はこんなにも情けないのだ。それを60年代の半ばに、深作欣二に先んじて描出していたというのがやはりすごい。
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