劇場公開日 1950年8月8日

「戦後5年、変わると変わらないの混淆」宗方姉妹 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5戦後5年、変わると変わらないの混淆

2024年6月10日
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鑑賞方法:映画館

笑える

知的

田代(上原謙)は家具屋で成功しているからか、余裕があって優しくて戦争を引きずっていない。一方、節子(田中絹代)の夫の三村(山村聡、適役!)は職がなく飲んだくれで最後は妻の頬を何度も叩いて離婚への道を自ら招いてしまった。三村は机に向かってドイツ語の本を読んでいた。文学か哲学か法律か医学か。いつの時代もインテリはそう簡単には職につけない。そして戦争での体験から抜けられない。

全く自分に合わない仕事、バーの経営をしている節子は昔のタイプの女だが、変わったのは世間だけでなく自分も変わった、と言わざるを得なくなった。でもその言葉はとても強くて「夫婦」という仕組みにはもう依存しないという、自分と田代への宣言のように聞こえた。節子の顔は晴れ晴れして暗さはもうなかった。

高峰秀子はベロを出したり口を尖らせたり本当に可愛らしい。時代の変化についていきたい好奇心と生命力がまぶしい。姉を慕い大切に思う気持ちは本心からで心優しい妹だ。姉も妹も、古さと新しさの両方を抱えながら前を向いている。

小津安二郎の映画にしては、俳優の個性がとても生かされていて、台詞のメッセージ性が強く、原作者・大佛次郎の魂がこもっていたように思った。

talisman
あんちゃんさんのコメント
2024年6月21日

共感ありがとうございます。高峰秀子のアプレゲールな感じ、小津にはどうだったんでしょうね。他の小津の作品でも高峰のような演技をした役者はいなかったような気がする。実は持て余していたんじゃないかな。

あんちゃん
トミーさんのコメント
2024年6月10日

共感ありがとうございます。
“夫婦”ヘの認識が現在とはかけ離れてましたね。戦争体験とかも色濃く残ってるんでしょうが、自分は現代人的な見方しか出来てないみたいでウィキペディアや他の方のレビューを見てびっくりしました。

トミー