「地味に長男の苦労」息子(1991) 万年 東一さんの映画レビュー(感想・評価)
地味に長男の苦労
今の時代、どんな田舎から上京して来てもあんなに訛りのある若者っているのだろうか、田舎者で純朴さを醸しながらあの頃の若者像を演じ切った永瀬正敏が清々しくもどこか危うい感じに好感が持てる。
T.Rex、マーク・ボランのTシャツを着てThe Clashの2nd「動乱(獣を野に放て)」のレコードが置いてある、そんな部屋のラジオから流れるキャンディーズって落差が面白い、戦地に行った爺さんは逞しい、そんな思い出を酒のツマミに、そんな同窓会的な、あの時代は盛んに行われていたのか、ある意味で怖くなる。
まだまだ面倒や心配を掛ける次男に対する方が父親としていれる訳で随分と楽なのだろう、慣れない土地で長男夫婦に世話になる遠慮と申し訳なさが親子の立場も逆転するようで、互いに真面目すぎるのも事がうまく働かない、社会に揉まれず良い意味で大人になりきれていない次男だからこその柔軟性が父親として文句を言いながらも居心地が良いのだろうと。
二人が田舎に帰って父親と三人で住む、そんなハッピーエンドを思いながらそれが幸せの選択肢とは限らない、三國連太郎が独り寂しく家路に着きノスタルジックな幻影に微笑ましくも哀しかったり、FAXを買った紙袋を持っている姿が、嬉しそうにしている、それだけで涙が出てくる。
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