「家族をつくるということ」息子(1991) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
家族をつくるということ
やっぱり、この監督は原作がある方がいい。
自分としての生き方を生きていく。
交わるところと、交わらないところと。
親の力を借りずとも生きていける。それは”一人前”になったということの証でもあり、親孝行のはずなのに。
昔なら、代替わりする頃には、親がボケるか、体を悪くするか、寿命でこういうことで悩むことはなかったのに。
自給自足に近い世界なら、地産消費で、遠くに行くことはなかったのに。
貨幣世界等、価値観が変わってしまった世界。
親の都合と希望。
子の都合と希望。
簡単に交わりそうなのに、交わらない。それが家族。
そんな中でも、未だ行先の定まらないと心配していた子が、パートナーを得て、己の生き方を定める。
それがこんなにうれしい親心。
終盤、哲夫の部屋での眠れぬ夜から岩手の実家に帰ってきた場面。
そのための映画。
もちろん、それまでに、三人の子の家族のいろいろを描いているからこそ、この場面が映える。
父を演じた三國さんのすごさ。田舎の老爺を見事に表現。普段のオーラなんてどこへやら。
そして、永瀬さんが初々しい。方言の発音も一番それらしい。他の役者が方言ぽく話していても聞き取れるのに、永瀬さんのだけは聞き取れない箇所がある(笑)。
和久井さんの初々しさもいい。思わず哲夫が、昭男がOK出してしまうのが、とっても理解できる。
原田さんも難しい役。
とはいえ、征子が美しいから哲夫は「聾唖でもかまわない」になったんだろうという流れには複雑。美しくなかったならどうなんだろう?
昭男にとっては、どうしようもない哲夫をまじめな勤労者にしてくれた福の神であって、容姿とかは関係ないのだろうが。
そして、長男の嫁にしろ、娘にしろ、次男の婚約者にしろ、実権は妻が握っているかもしれなくとも、外面では周りに気を使って、夫を立てているという女性像ばかり。ワンパターン。
だから、きれいに収まるのだ。