劇場公開日 1995年7月15日

「名作だった」耳をすませば(1995) タンバラライさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5名作だった

2022年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

私にしては極めて珍しいことで、テレビで見た。どこをどう探しても配信では見ることができなかったからだ。物語の前半はちょっとしたミステリータッチに描かれておりそれが大成功していて引き込まれた。そして続く話が盛り上がっていくのであるが1時間で物語が終わってしまっているの「ありゃー」・・となった。で、 CM の間にこの後どうなるんだろうかと考えていた。長い蛇足を見せられるのか?蛇足なりに 悪くないのか?それとも作者の描きたかったものがここから先にあるのか・・・?
続きをしばらく見ていて「これは蛇足だなあ」と思っていたらそこに素晴らしいエピソードが来た。バロンと恋人の話。あのキレのあるエピソードひとつで蛇足が蛇足でなくなったように感じた。・・・もしかしたらネタの良さというより演出の力かもしれない・・・普通あの話を聞いてあれをもらっただけではクライマックスとして成り立たない。それまでの伏線、特にイマジネーションとして描かれてる部分がとても良く効いているのでグっとくるものになったんだと思う。さすがの脚本構成力だ宮崎駿。そしてノロケ話になる前にうまく締めくくってスパッと終わったのがよかった。そのおかげでラストの音楽がとても効果的になった。また、道路を意図的にやや危険に描いており、それがフックとして効いていて飽きさせないのに一役かったと思う。演出の妙だな。
この作品は何と言っても主人公のキャラクター設定が素晴らしく本当に生き生きとしていた。ラストシーンの演出も大げさすぎなくていいな・・と思っていたら絵コンテを切っていたの宮崎駿だった。なるほどね。それからおじいちゃんの店を外から見たところの絵が際立って綺麗だった。きっとあれを描いたのは山本ニ三に違いない。早く彼を超えるようなアニメーターに登場して欲しいものだ。

映画を見た後どうしても気になったので原作の漫画を読んでみた。
ネタバレ注意
やはり私が睨んだ通り漫画のお話は途中で映画で言うと途中で終わっている。そこから別の話みたいな感じでの「小説家になりたいから高校行かない」とか言い出すというエピソードが全くのオリジナル。 それから重要な宝石の話も全くのオリジナル。映画としては短すぎる話をこのような工夫によって後半部分を再び盛り上げ立派な脚本に仕上げてしまった力は本当にすごい。宮崎駿作品の中で最も宮崎駿の脚本力の凄さを見れる作品だと思った。

タンバラライ