「浅岡ルリ子デビュー作」緑はるかに odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
浅岡ルリ子デビュー作
新聞連載の少女の冒険物語を読んだ水の江瀧子さんが惚れ込んで映画化、原作は科学者の父の研究を奪おうとする悪漢から秘密を守ろうとする娘の波乱万丈の冒険活劇なのだが映画は子供たちが悪漢たちに苦しめられながらも頑張って逆に懲らしめると言うコメディ仕立て、おまけにお遊戯会のようなミュージカルシーンまで入れ込んでいるからお子様ランチ状態。
主役は3000人の中から選ばれた浅岡ルリ子(当時14歳)さん、ミュージカルシーンでは当時19歳の岡田真澄さんが月の王子様、白鳥を北原三枝さんが踊っていました。
水の江瀧子さんは自身も松竹歌劇団で名声を博したショーガール、本場NYでもショービジネスを学び劇団の主宰や映画、テレビでも活躍、後に新興の日活に女性初のプロデユーサーとして入社。石原裕次郎さんを発掘したことでも有名ですが岡田真澄さんや銀座のクラブでドラムを叩いていたフランキー堺さんを映画界に誘ったのも水の江さんですから新人発掘のパイオニアでした。
当時を振り返って駆け出しのプロデユーサーでは誰も俳優を回してくれないから新人を使うしかなかったと言っておられました。
子供向けかと思ったらいきなり誘拐事件、流石日活、サスペンスかと思いきや、やっぱり学芸会でした。井上監督は「オズの魔法使い」に触発されたと言っていましたがミュージカルシーンは水の江さんの好みでしょう。原作では誘拐され拷問を受けるのはルリ子でしたが子供にそんなことはさせられないと思ったのでしょう。連載途中での映画化ですから結末は原作と違って当然ですが、あり得ないようなハッピーエンドにも伴侶や子供に縁の薄かった水の江さんの想いが伺えます。
ハードボイルド、純愛、若者カルチャー、ロマンポルノと邦画史の一時代を担った日活にこんなお子様映画があったとは勉強になりました。