マークスの山のレビュー・感想・評価
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刑事同士の緊張感漲る関係が素晴らしいが学生運動の描き方には疑問符
この映画は直木賞を受賞した高村薫の話題作が原作で、小生は未読だが、かなりの大部の作品である。ストーリーも入り組んでいて、概要を読んでいるだけで頭が混乱してきそうになるw 映画はその長すぎる原作を相当圧縮しているし、犯人から強請られるエリートグループの関係と強請りの原因を変更していることから、話のあちこちに無理が見られる。とはいえ本作にはいいシーンが多いのだ。 まず、素晴らしいのが、合田やお蘭、ペコ、又三郎を始めとする刑事たちの緊張感漲る関係である。 実力社会、能力社会だから、力のある人間は偉そうに振る舞い、遠慮会釈なく強い言葉で命令を下し、ポジションが下だったり実力のない人間は不承不承従う。 力量が同等の刑事同士では激しい鞘当てと鍔迫り合いが繰り返され、時には腕ずくで言う事を聞かせ、時には無能な同僚をリンチ同然に詰問する、ギスギスして荒んだ、しかし職業倫理に忠実で優秀な組織。 本当にそんなに優秀なのかどうか定かではないwが、このむき出しの力勝負という関係、犯人との対決の前に仲間同士で対決しなければならないという構図は、この映画でしか見たことがない。 個人的には警察内部で、ペコの報告を聞いた合田が「そりゃ、おかしいだろ」と問い詰めるところ、合田が警察関係者の事情聴取も必要と主張するのに対し「その関係者とは俺様のことだよ、バカ野郎!」と怒鳴りつける吉原刑事のいかつい表情、お蘭が別の報告者に「どう成果がなかったのか説明してくれ」と文句を言うところ、合田が刑事グループにリンチに遭う場面が面白かった。 WOWOWドラマ版『マークスの山』も見たが、このピリピリ張りつめた雰囲気は到底出せていなかった。 次に、ラストの登山シーン。かなりきつい山道を捜査員たちが黙々と登っていく中、登山経験豊富な合田は身軽に率先して歩を進めると、やがて山霧がたちこめ、皆ヘルメットランプを点灯する。 そして霧が晴れ頂上に上り詰めた合田は、水沢が岩にもたれ掛かって死んでいるのを発見する。遅れて到着して息の切れているお蘭に休む間も与えず「検死をしろ」と命じ、さらに「写真!」と撮影担当者を呼びつける。 高山の壮絶な見晴らしと寒気、強風の厳しい自然、それにまったく動じない合田の力強さが際立つ。BGMのバグパイプ音楽も非常にセンスがいい。 ついでに惜しげもなく脱いだ名取裕子のセックスシーンは、よく頑張ったw 他方、いただけない点も多々ある。 マークスたち5人の関係が原作から大幅に変更され、水沢に強請られる原因が学生運動の内ゲバによる対立セクト・メンバー殺害と、その実行犯の殺害となっている。彼らの所属するサークルが名門山岳部だというのが、まずおかしい。 学生運動は主に文化会系サークルがやっていたもので、体育会系の山岳部サークルが内ゲバにまでのめり込むというのは、ありえなくはないが考えられないw なおかつ、それが名門大学の名門サークルというのでは違和感がありすぎる。 さらにマークスたちの口にするサヨク用語に、そうじゃないだろう感が強く漂う。 佐伯「くだらん。テーマは現在だよ」 林原「御明晰」 ――は? 何だ、これ? ここは、林原「総括しそこなった過去こそ、俺たちの現在的課題だ」くらいにしとけよ、と思わされる。 林原「前のはともかく76年に関してはお前と木原の意志が俺たちを規定した」 佐伯「共同正犯だ」 ――やっぱり何だ、これ?であるww ここは、佐伯「諸個人の自由意志によりアンガージュしたのさ」だなw 脚色の丸山は大学時代ノンポリだったようだし、崔は大学に行っていないから、大学闘争やサヨク的言辞に馴染みがないのではないか? この取って付けた感はそこからくるのだろうが、取材でカバーできなかったものか。 ともあれこの監督に対しては、人種ネタによる評価の下駄履きが多いのでウンザリしているのだが、本作と『刑務所の中』は捨て難いと思う。
登場人物の関係性が分かりにくい。
長い原作なので映画も長くなってしまうのは仕方ないのだろうが、原作を読んでいないせいか登場人物の関係性が分かりにくい(おまけに20年前の場面で違う俳優を使っていたりするので)。学生運動を知らない若い世代にはもっと分かりにくいだろう。
特に何が悪いわけではないのだが
劇場公開時鑑賞。原作既読。あのウンウン言いながら必死で読み進めてやっとの思いで読み終わる頃にはヘトヘトになるような重厚長大感こそが高村薫だとするならば、「た」ぐらいの高村薫感でしょうか。 映画だから勝手に進んでいくのですが、ちょっといやかなりあっさりに感じてしまって物足りなく
暴力シーンが生々しく悪を感じる。殴りまくりで異様に長い場面が多くて...
暴力シーンが生々しく悪を感じる。殴りまくりで異様に長い場面が多くて気持ち悪い。 名取裕子が萩原聖人を庇って撃たれ、体を派手に2発の銃弾が突き抜けるシーンがあるんだけど、そこ以外の流血シーンは全部気持ち悪い。 グロいのもそうだけど悪意が凄い。刑事が刑事を嵌めただろうとか言ってボコすシーンも本当に嫌らしい。 全共闘の内ゲバのことで強請って金を得るも山で死ぬみたいな話でそれを取り巻く暴力。
途中で遭難してしもうた…
直木賞を受賞した高村薫の同名小説を崔洋一監督が映画化したミステリー・ドラマ。1995年の作品。
暴力団組員が惨殺される事件が発生。
同様の手口で、法務省の刑事課長も殺される。
警視庁の合田警部補が捜査を担当。難航するが、やがて事件の背後にある大きな存在と悲しき犯人が浮かび上がる…。
あらすじだけ聞くと、面白そう。見応えありそうな事件モノ。
今も売れっ子、今や売れっ子、思わずおお~っと唸りたくなるような実力派たちの豪華共演。
その年のキネマ旬報でもベストテン9位、大人向けの一級品。
…のようだけど、
実際見てみると、う~ん、何て言うか…。
人間関係が複雑。と言うか、分かりづらい。
捜査班や別の署の刑事たちとのいざこざ、対立。
捜査線上に浮かび上がった重要人物である弁護士。被害者との関係。今も繋がりある学生時代の山岳部の仲間と、彼らと犯したある事件。
今回の一連の殺人事件の犯人。犯行の動機。ある看護師との関係。
ただでさえ登場人物が多い上に、関係性や背景も交錯。
勿論徐々に繋がりなど分かっていくが…、それでもいまいち釈然としない。
脚本の纏め方が悪いのか、単に自分に理解力が無いだけか。
ストーリー展開のテンポやスリリングさにも欠け、刑事/事件モノの醍醐味をあまり感じられない。
また、あちこちで言われてるように、被害者の生々しい描写、暴力描写、特に犯人と看護師の濃密な濡れ場など、過剰なグロエロ描写がヘンに目立つ。正統派のミステリーと思って見たら、違和感を感じるかも。
犯人の半生として見れば、悲痛なものはある。
その青年、水沢。
幼い頃、冬の南アルプスで、一家心中の生き残り。
精神病院に入院し、そこで、ある男と肉体関係を結ぶ。この男から教えられたある秘密が、恐喝や殺人の動機に繋がる。
精神病院入院時に看護してくれた看護師と再会し、愛し合う。唯一、束の間の幸せ。しかし…。
何故水沢が恐喝や殺人にまで及んだか、これもちと説得力が弱いが、運命に翻弄され、ある場所であるものを抱えた最期は何ともやりきれない思いにさせられる。
豪華なキャストの中でもとりわけ、萩原聖人が印象的な演技を見せる。
(後、名取裕子のヌードやラブシーンも)
前々から気になっていた作品で、結構期待していたのだが、いざ見てみたら…、
不完全燃焼。途中で遭難してしまった。
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