「嘘をついて大人になるより夢見る迷い子で旅を続けていたいの」香港パラダイス こうたさんの映画レビュー(感想・評価)
嘘をついて大人になるより夢見る迷い子で旅を続けていたいの
ぼんやりとした表情で「たいした映画じゃないです」とつぶやく斉藤さんに司会者が大慌て。
当時映画の宣伝でテレビ出ていた斉藤さんの姿である。
沢尻エリカの「別に」のほうが映画の内容に触れていないぶんまだ社会人。
80年代は間違いなくアイドルの時代だった。
この映画が公開された1990年は既にアイドル氷河期が始まっていた。
あの斉藤由貴が深いスリットのチャイナドレスや胸元露わなボディコンミニスカ姿でアクションである。
熱烈なファンほど求めていない新しい斉藤さんの姿である。
目は焦点が合っておらず、荒れた肌を厚化粧で誤魔化している。
辛い時期であろうが、彼女の持つ何処か異様な雰囲気が得も言われぬ色気に転化しているのも事実。
さらに皮肉なことにこの頃の斉藤さんは、アーティストとしての自我が最高潮となり、才気が迸っていたのである。
その証拠に今作公開と同年に唯一無二の大傑作アルバム「MOON」をリリースしているのだ!(アイドルに興味のない方は「ふ~ん」でしょうが…)
時間とお金と才能をたっぷりかけて、表現者として桃源郷のような境地に足を踏み入れた大傑作アルバムを作り上げた斉藤さんと、「大した映画じゃない」映画に出ている斉藤さんとは、どうにもこうにも結びつかない。
もしかしてこの映画の企画って、「MOON」の企画との交換条件か?
冒頭の発言は、永遠の少女を無理やり大人にさせようとする映画界への遣る方無い思いの表れだろう。
香港ではなく、心の中にパラダイスを探し続ける斉藤さんは、間もなく永遠の少年と恋に落ち、地獄を見ることとなる。
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