「鉄道=映画のアナロジー」鉄道員(ぽっぽや) hyvaayota26さんの映画レビュー(感想・評価)
鉄道=映画のアナロジー
御涙頂戴映画と敬遠してたけど、どうしてなかなかのものだった。
廃線になる鉄道が、廃れゆく映画業界のアナロジーになっていて、映画全盛期のスター高倉健が時代遅れのやがて去り行く男を演じるという多層性。さらに映画に生きた高倉健の人生も重なる。
対比する若い人たちの使い方もうまい。吉岡秀隆に「あなた(=高倉健=映画)」をみることでずっと励まされてきました」と言わせ、安藤忠信には「鉄道員」という名のイタリア料理屋を開く。業種は違っても映画の意志を継ぐ人はいると言わんばかりに。「鉄道(=映画)一筋で俺の人生なんだったのかな」という高倉健に広末涼子は「楽しい思い出が残るじゃない」という。
東映のスター高倉健と、名もなき役をコツコツ演じてきた小林稔侍が酒を酌み交わすのも感慨深い。
また、お汁粉を用意したり、温かい牛乳やコーヒーをあげたり、定年後の心配をしたり、古き良き男同士の気遣い、ケアが描かれていてこちらも感動。
鉄道の撮影も素晴らしい。北海道の鉄道がどんどん廃線になる中で2000年にこの映像を残してくれたのだ。
志村けんもふざけすぎず絶妙に味のある役をやっていて、いい脇役だった。奈良岡朋子もよかった。
セリフにしすぎかなと思うところもあったけど、多くの観客に見てもらうにはこのくらいは必要だったのかなとも思う。
細部までよく手をかけられていて、有能なベテランスタッフが全力で仕事したんだろうなと思わせる。日本の映画界を支えてきた人たち。
この映画を丸の内TOEIの大スクリーンで最終日に見られてよかった。
コメントする
