「タイトルなし(ネタバレ)」鉄道員(ぽっぽや) まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
機関車が走って行く風景は、ため息が漏れるほど美しかった。星5つ。
映画としては、正直私は全然響かなかったし、違和感や気持ち悪さを拭えないまま終わりました。口移しのシーン(キスではなく口移し)で残念ながら嫌悪感マックスに。いや、分かりますよ、雪女の昔話は子どもの頃大好きだったし、何度も繰り返し読んでましたから。あの独特の雰囲気、たまらなく魅力的だし、映画作品としてやりたいことは分かるのですよ。でもねー小説ならいいけど実写は厳しいよね…全体的に、作り手の、老齢男性の独りよがりなロマンというか妄想という印象が強かったです。
愚直なまでに、頑固に職務を全うする高倉健さんはカッコよかったです。国鉄の実際の鉄道員がどうだったかは分かりませんが、医者や消防士などを思えば現代も共感できることは大いにあり、特別な職業でなくても、誰かのための滅私は美しく尊いという感性は、はき違えることさえなければ非常に大切なものだと思います。
ところで、なんでこんなに風景が美しく感じられるのだろうか?
結論から言うと、やっぱり自分は、侘び寂びにグッと来てしまっている…気がする。
日本の蒸気機関車1号は英国から輸入したと記憶していますが、届いた時は簡易塗装だったようです。つまり「マットな黒」。子ども向け番組の機関車トーマスを見れば分かりますが、英国の機関車はカラフルな塗装でエレガントな装いのものが多く、黒はどちらかというと戦時中の財政難だった頃のスタイル。英国としては、正式な塗装はそちらでどうぞ、ということだったのでしょうが、日本は黒が正式なものと勘違いした可能性はあります。
そこで、映画の機関車を、英国式のカラフルな車体に置き換えて想像すると…
あ、あれっ?なんか違う。
(作品中では黒以外の列車もありますが、錆びたような渋い色合いで、華やかさはありません)
降りしきる真っ白な雪に黒い機関車という組み合わせは、生活に必要な移動手段としての素朴さがありながら、どこか厳かで、閉ざされていて、神秘的。ずっと見つめていたいカットが、たくさんありました。
あと、特筆すべきはだるま屋のおかみさんですね。かなり良かったです。
まゆうさん
こんばんは🌙
優しい心のお便り 届きました。ありがとうございました☺️
「口移しのコーヒー牛乳」のあのシーンは、実は原作本には書かれていた「乙松は雪女に命を取られたんだな」という同僚たちのセリフを、映画監督としては感覚としてそぐわないから削除したのだけれど、少しだけオカルトなあのシーンだけは映像として残されたって感じのようですね・・。
映画への感想ってね、その時の自分を映す”正直な日記“だと、僕は思うんですよ。
そして時間と年月が過ぎると、もちろん自分も変わる。
そして映画への印象も まるっきり変化するの!
そこがとっても面白いから、僕は自分自身のために感想文と記録を書き残しているようなもんです。読み返してみるとその頃の自分が分かるから。
んー、たとえば
「マディソン郡の橋」とかですね。
黒い日本の蒸気機関車は、ホント、おっしゃるとおり水墨画のような美しさです。機関車トーマスでは幌舞駅の物語にはならなかったかも(笑)
映画って楽しいですね。
長文失礼しました
きりん