劇場公開日 2020年11月6日

「走馬灯 雪子。しずえ。 そしてどうして高倉健の元妻の江利チエミの歌が・・🤔?」鉄道員(ぽっぽや) きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0走馬灯 雪子。しずえ。 そしてどうして高倉健の元妻の江利チエミの歌が・・🤔?

2025年6月2日
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鑑賞方法:VOD

定年間際の高倉健(乙松)さん ―
鉄道員一筋の人生を送ってきました。
早まった幌舞線の廃線と、失業の肩叩きが、実直で不器用な彼を追い詰めています。

広末涼子さん ―
先日は交通事故を起こし、現場ではご本人、奇妙な行動だったとか報道されていました。
また元夫のキャンドル・ジュンさん(=わが町松本の出身)との結婚劇とか、
なぜか早稲田に入学したものの通学はせず、出産で中退したエピソードとか。
話題には事欠かないタレントさんですね。

僕は実は、彼女のたいへん独特な雰囲気が嫌いではないのです。

それでニュースを見ながら、出演作としては真っ先に思いついた本作「ぽっぽや」を改めて、20年ぶりに鑑賞してみたわけです。

はたして、ドラマの流れや、共演する他の俳優さんたちの雰囲気の中で
広末涼子は少しだけ場違いなフィーリングをかもしている。違和感がある。だから目を引く。
半分どこか浮いている存在で、広末の雪子はそこに映って居ます。
恐らく彼女の生来の異風なところ=「周囲の状況に馴染まない姿」が、「半分あの世の存在である雪子という設定」にはピッタリだったのではないでしょうか。

「幽霊だって言ったらおとっさん怖がるかと思って」
「どこの世の中に娘を怖がる親がいるものか」

今回、2度目の鑑賞です。
前回は、僕は単に雪子の登場に熱い涙を流すばかりでした。僕もまだ若輩でしたから。
しかし今回は僕は健さんの年を超えています。
半年後に定年退職という切羽詰まった状況も一緒です。

娘が音沙汰ないというのも一緒だなぁ(苦笑)。

働いた末、
雪の中に倒れて、
遠のく意識の中で、
その走馬灯の光の中、
死が迫る中に、臨終の老人には真の思い出ばかりでなく理想化して脚色されたストーリーや、そして“せん妄”も起こるかも知れません。

6年生の雪子に口移しでコーヒー牛乳を飲ませてもらう普通ではないあのシーン。
幽霊の雪子が 更に亡くなったしずえに重なって見えてしまう幻覚。
脳の血流が途絶えてゆく中では仕方ない事だが、我々だってその時には例えば好きだった元カノや前妻の名前を呼んでしまう事もあるだろう。
(=高倉健の前妻江利チエミのテネシーワルツが敢えて執拗に流れる演出の意地悪は、今回初めて気づいた点)。

本作、人の臨終を、本人の視点で、銀幕上に丸ごと語っていたのです。
だからこそ、そんな老人の終わり方をば労って、旧知は周りで温かく見守ってやりたい、
そういう優しい眼差しの映画でした。

幌舞駅は終点駅です。
その先はもう無い。線路はそこで途切れている。
そのような終着駅のあり様と老人の不器用な立ち姿が、
時代遅れの粗末な駅舎の容貌にただ重なって見えるのでした。

思うに、
走馬灯のように人生の過去を振り返りながら
消えゆく意識の中で、雪の上に倒れながら、男高倉は112分間「己の来し方の《幻》を見ていた」のではないだろうか・・

映画は、亡くなった俳優たちに会える不思議な魔法です。
送り号の汽笛が、誇り高き先達に捧げられて
雪原にこだましていました。

・・

元特養ホーム職員、
看取りは任せて下さい。

きりん
きりんさんのコメント
2025年6月3日

「テネシーワルツ」、
まさかの高倉健さんご自身による劇中歌リクエストだそうですね・・
ますます乙松駅長にとっての現実世界とあの世との境界線が曖昧になってボヤケて見えてきます。

きりん
マサシさんのコメント
2025年6月2日

おはようございます。
共感ありがとうございます。というよりも誠にすみません。
フィクションに噛み付いても虚しいですね。すみません。
この映画のモデルになった駅は多分新得、富良野間で最果て駅ではないと思います。2024年に廃線になりました。富良野に出る為には旭川を経由する以外ないそうです。エネルギーの転回による産業構造の変化なんでしょうね。
まァ、この映画のテーマもそれなんでしょうね。だから、当事者だった親父の息子としては「なんだそれ!」ななってしまいました。重ねて夜行列車を使い富良野に出て夕張の山を登った思い出や帯広から石狩岳に登った思い出か、新得富良野間の廃線で瓦解してしまいます。狭い日本が金を使わないとどんどん広くなって行きます。
松本には新宿、23時55分発の夜行列車で出かけたのを思い出します。しかし、なぜか廃止されてますものね。「狭い日本なんだから、早く」が今の市場経済なんでしょうね。ディスカバージャパンは遠く成りにけりですね。
長々とすみません。
最近の映画面白くなくて、へきへきしてます。

マサシ
きりんさんのコメント
2025年6月2日

ついでですが
京都には和菓子の老舗「老松」という名店がありますよね。そして
松本にはそのものずばり「開運老松」というお目出度いお菓子があります。
乙松駅長を偲んでみました。

きりん
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