劇場公開日 1981年9月12日

「歌麿を愛川欽也が演じる。新藤兼人らしい。」北斎漫画 はるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5歌麿を愛川欽也が演じる。新藤兼人らしい。

2021年6月13日
PCから投稿

夕立が世間を濡らす。人の心が躍り出す。まるで狂った馬のように・・・世相という虻に刺されぬように走り始める。北斎は怯えたままの青年。従って吠えまくる。誰彼なしに噛みつく。それは絵が下手糞だからだ。
画家に才能など必要ないように思えてくる。
自然から聞こえてくる言語以外の声を身体で聴き取ることができるか否か、それが全てなのだ。
時の流れの中に身を委ねて静かに待ち続けられるかどうか・・・・そんな辛抱ができる者だけが描けるのだ。世間に認められようが拒否されようが関係ないことだ。描写技術などアシカに食わせてしまえばいい。体の中に映ったそのものを筆でなぞれば済む。そんなことに気が付くのに80年もかかった北斎は狂言回しの猿のようだ。

新藤兼人のシニカルさが見事に発揮された葛飾北斎とお栄の映画だった。

はる