「男臭くはない男の話」兵隊やくざ よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
男臭くはない男の話
勝新太郎演じる新兵が、教育係の田村高廣との間に不思議な友情を育んでいく物語。
組織の垂直性と暴力が支配する軍隊生活への怨念を、これでもかというほど描いている。どこまで現実の軍隊内部のリアリズムに迫っているのかは別として、暴力機関である軍の内部が、このように内に向いた暴力で満ちていたとすれば、外国の軍隊との戦闘をする以前に疲弊してたであろう描き方である。それとも、血の気が多い男たちの社会には、このような暴力がエネルギーのはけ口として必要だったいうのだろうか?冒頭の田村のナレーションの声を聴く限りでは、こうしたことを忌み嫌っている視点からの語りだということになる。
この物語の面白いところは、男社会の中で、その暴力性や権威主義に背を向けている男が、その暴力に満ちた男の世界を突き抜けてしまった男と心通わせるところにある。本来であれば、お互いの生き方を認めるはずのない地点に立っている者同士が、双方の尊厳や命を守るために身を投げ出し合う。
ホモソーシャルに背を向けた男同士のたどり着くのは、ホモセクシャルという映画は観たことがるが、ここにはホモソーシャルを超越したホモソーシャルな関係が発生するのだ。この映画は、この新たな関係を描くことで、戦争や軍隊という暴力を批判している。
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