ふるさと(1983)のレビュー・感想・評価
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失われゆくものへの鎮魂を歌った名作
今まで観た映画の中でも、最高に心を揺さぶられたのが、日本の独立プロが制作したこの一本だ。
移り変わってゆく世界との別れを描いた作品は、古今東西に多々ある。 しかし、これほど見事な映像詩として作り上げた作品は、他にないかもしれない。 モスクワ国際映画祭で最優秀主演男優賞を獲った加藤嘉の驚くべき演技はもちろんのこと、息子夫婦役の長門裕之、樫山文江をはじめとする登場人物が、それぞれの役に生命を宿している。 とにかくすばらしい。
最初に映画館で観たのは随分昔のことだが、別れのシーンでは耐えがたい悲しみに襲われ、不覚にも激しい嗚咽をもらしてしまったことを思い出す。 だからといって、作品全体が重苦しい喪失感だけに覆われていないのは、美しい自然の映像と、互いを思いやる人々の素朴な優しさが作品全体を包み込んでいるからだろう。 神山征二郎監督の故郷、岐阜への深い思いが生み出した、日本映画史に残る名作だと思う。 都会育ちでふるさとを持たない人でも、きっと懐かしく暖かな気持ちになるのではないだろうか。
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