「事実と虚実紙一重の緊迫感はスクリーンからも伝わってきましたね。」不毛地帯 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
事実と虚実紙一重の緊迫感はスクリーンからも伝わってきましたね。
神保町シアターさんでの特集企画『生誕百年記念 小説家・山崎豊子 華麗なる映画たち』も2週目。本日は『不毛地帯』(1976)、『横堀川』(1966)の2本を鑑賞。
『不毛地帯』(1976)
小説連載中にロッキード事件、ダグラス・グラマン事件が発覚して連載と事件が併走、一部実在のモデルが特定されそうなフィクションすれすれな原作を山本薩夫監督が『白い巨塔』『華麗なる一族』に続き手がけた社会派映画。
当時は山本薩夫監督の政治的信条から独自に改変した部分が国会でも論議になるなど、事実と虚実紙一重の緊迫感はスクリーンからも伝わってきましたね。
壱岐正役仲代達矢氏は過去を背負った大本営の元作戦立案参謀中佐を感情押し殺した演技で見事演じ切りましたが、その他キャストも戦友の川又空将補役の丹波哲郎氏はじめ大門社長役の山形勲氏、専務の神山繁氏、ライバル東京商事の田宮二郎氏とベテランの重厚な演技もリアルで素晴らしいですね。特に本作の敵役でもある貝塚官房長役を演じた小沢栄太郎氏の憎々しい老獪な演技は白眉でしたね。これだけの名優、バイプレイヤーのキャスティングは今の時代なかなか想像がつきませんね。
本作は原作小説の前半部分、諸般の事情で後編は制作されませんでしたがぜひ観たかったですね。180分の長尺でしたがあっという間でした。
コメントする