ビルマの竪琴(1956)のレビュー・感想・評価
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竪琴の音に理想と祈りをこめて・・・‼️
わが敬愛する市川崑監督の数多くの名作の一本です‼️太平洋戦争末期のビルマで日本兵の悲惨な死に様を目の当たりにし、日本へ帰らず僧侶になって霊を慰めることを決意する水島上等兵の姿を描く‼️後にリメイク版も市川崑監督自身の手で製作されましたが、やっぱりオリジナルが好き‼️まずこの映画が素晴らしいのは、従来の反戦映画と違い、将校にも兵隊にも悪人はおらず、戦争そのものが悪いという主張で平和を祈る作品となっているところ、ヒジョーに格調が高いところですね‼️「金田一耕助」シリーズに代表されるテクニシャンな市川崑監督なんですが、ここではそのテクニックを封印し、ストレートに正攻法にこの素晴らしい名作を仕上げてくれています‼️印象的な場面がいくつもあります‼️僧侶姿の水島上等兵の肩に止まったオウムがしゃべる「ミズシマ、イッショニニホンヘカエロウ」という言葉‼️日本軍の、そしてそれに応えるイギリス軍の「埴生の宿」の大合唱‼️合唱シーンをはじめとする音楽の使い方もホント素晴らしい‼️そしてラストのビルマの荒れ果てた地で、小さく主人公の後ろ姿を捉えたショット‼️水島の行く手にある過酷な運命を暗示させる重く非情なショット‼️この後ろ姿にいつ観ても涙させられるんです‼️
ビルマで亡くなった多くの日本兵士の弔い映画なのだろうが不満を覚えた
市川崑 監督による1956年製作の日本映画。配給:日活。
市川崑監督による「細雪」の映像,特に短いショットで繋ぐリズム感が大好きで、監督の昔の作品も見たいということで本映画を鑑賞。
ヴェネツィア国際映画祭サン・ジョルジョ賞受賞の著名な映画で有るが、正直この物語を好きになれなかった。また、映像も特に印象に残らないもので、期待はずれであった。
徹底して、日本人のことにしか頭にない視点が嫌であった。確かに大勢の日本兵の死体(死者16万7千人とか)はあっただろう。しかし、闘った敵兵(中国軍死者10万人、英軍は戦死者14326人行方不明者・負傷者・捕虜59583名とか)や傷つけた或いは生活を痛めつけたかもしれない現地人はどうだったのか(NHKによれば住民の死亡者9万4千人)?原作があるにせよ、アジアに大きな惨禍を引き起こした国民としての意識のかけらが少しは制作側にあっても良いのではと思ってしまった。
ビルマの物売り婆さんを、北林谷栄が演じている。それ自体は良いとしても、変な日本語ながら、あれだけ多くを話せるのはかなり不自然に思えた。そして,ビルマの僧侶は戒律によって楽器の演奏は禁じられているそうなので、ビルマの文化を馬鹿にしているとも思ってしまった。
とは言え、竪琴の音色は美しく、戦争が終わったのに関わらず部下兵士の全滅を強要する指揮官の存在は、日本軍の酷さを良く描いていた様にも思え、その点では評価できるのかも。
原作者竹山道雄は、日本の評論家、ドイツ文学者、小説家で日本芸術院会員。第一高等学校教授、東京大学教養学部教授とか。音楽好きの隊長演ずる若き三國連太郎が佐藤浩一にそっくりでビックリ。音楽は『ゴジラ』テーマ曲で有名な伊福部昭さん。
監督市川崑、脚色和田夏十、原作竹山道雄『ビルマのたてごと』(童話雑誌『赤とんぼ』(実業之日本社)に1947年3月から1948年2月まで掲載)、製作高木雅行、撮影横山実、美術松山崇、音楽伊福部昭、録音神谷正和、照明藤林甲、吉田協佐、助監督舛田利雄。
出演
三國連太郎井上隊長、浜村純伊東軍曹、安井昌二水島上等兵内藤武敏小林一等兵、西村晃馬場一等兵、春日俊二牧一等兵、中原啓七高木一等兵、土方弘岡田上等兵、花村信輝中村上等兵、青木富夫川上一等兵、千代京二大山一等兵、伊藤寿章橋本一等兵、小柴隆清水一等兵、宮原徳平永井一等兵、加藤義郎松田一等兵、峰三平阿部上等兵、三橋達也三角山守備隊々長、成瀬昌彦兵隊一、天野創治郎兵隊二、森塚敏兵隊三、小笠原章二郎兵隊四、佐野浅夫脱走兵、中村栄二ビルマの老僧侶、北林谷栄物売りの姿さん、澤村國太郎物売りの姿さんの亭主、伊藤雄之助村落の村長、長浜陽二竪琴を弾く少年。
戦争の虚しさを伝える名作
「戦争は愚かでいけないことである」とは誰でも言えることだが、ぎりぎりの戦禍を目の当たりにして、自己の復帰よりも、その果ての結果の慈しみが勝るという姿を如実に表現した名作でしょう。既に戦争実体験の無い我々現代人ですが、教訓伝承手段の一つとして、この映画を若者に観てもらって、さまざまな議論展開することが望ましいと思いました。 (現代の様々な閉塞感を認識する2021年の盆)
ビルマの土はあかい 岩もまたあかい
一度は聞いたことのある名作。
ビルマの竪琴も市川崑監督作もこれが初めてでしたが、とても良い映画でした。
中井貴一版の方が有名ですが、これはそれより30年も前、戦争からは10年ほどしか経っていない時に作られた作品です。
全編モノクロなんですが、観ているうちに色鮮やかに観えてくるようで、役者さんの表情も当時の不安と熱意に溢れていてとてもリアルでした。
話自体は淡々と進んでいき、特に大きな展開があるということもなく、展開は想像できる分かりやすいもの。
しかし、モノクロで淡々としているからこそ、強くて深いメッセージ性がありました。
どんどん映画の中に引き込まれ、まるで自分が水島の立場に立ったかのような感覚になるので、戦争の恐ろしさや悲惨さがよく伝わってきました。
そして、なんといっても戦争の恐ろしさを描きつつも、合唱で一つになる彼らや現代でもクスッと笑えるようなところがこの映画の良いところだと思います。
なぜか関西弁を覚えた現地のお婆さんはここ最近で観た映画で一番好きなキャラクターかも。
歌の力、琴の力、音楽の力。
観て良かったなと思える作品です。
同じく市川崑監督ですが、比較として中井貴一版も是非観てみたいと思いました。
音楽の力と白黒作品ながら色彩の力を極限まで引き出した圧倒的な名作です
純粋な本当の意味での正しい反戦映画です
変に左翼思想のイデオロギーに毒されて偏向していない本物であると言うことです
市川崑監督の演出力、構成力
それが音楽の持つ力を圧倒的なまでに引き出しています
ビルマの竪琴の音色は冒頭すぐ披露されます
思った以上の美しい音色と和音で誰もが驚くはずの音色です
そして部隊の合唱シーンに入って行きます
この冒頭のシーンこそ本作品の核心を象徴しているのです
続く村のシーンでは音楽の力が戦いを阻止するのです
音楽の力をこれほど引き出している映画は、そうないと思います
そして色彩
本作は白黒作品です
しかし色彩はあるのです
ビルマの
土はあかい
岩も
またあかい
冒頭とラストシーンで大写しされるテロップです
なぜあかいのでしょうか?
それは、もちろん元から酸化鉄を多く含んだ土の赤さなのでしょう
しかし、そのビルマの大地には戦争により、銃弾や砲弾、爆弾の鋼鉄の雨が降ったのです
その鉄の赤い錆びが大地に染み込んだのです
赤錆が雨で流れて大地に染み込んで行くさまはまるで血が流れたかのようにみえるのではと想像されます
そしてなにより、戦争では日英両軍の兵士達の血が流れ、赤錆の水よりもなお赤いその色をビルマの大地に染み込ませたのです
だからあかいのです
岩もまたあかい
戦場で死んでも、そのまま放置されたままの多くの日本兵の骸
それは鳥についばままれ、ビルマの灼熱の太陽が肉と血を干からびさせて、真っ赤に染まった軍服はボロ布になり果て、血で赤く染まった骨にまとわりついて、まるで赤い岩のようになっているのです
その岩が無数にビルマの赤い大地に転がっているのです
誰がその魂を鎮めてやれるのでしょうか?
生き残って日本に還る部隊の面々の心の中も、赤い大地と赤い岩が無数に転がっているのです
そしてまた、ビルマの土と岩のあかさだけでなく
ビルマの仏教僧侶のオレンジ色の僧服
仏塔の輝く金色、ビルマ寺院の鮮やかな彩色
ジャングルの濃い緑
インコの美しい色彩の羽
大河の川の泥水の色
そして、ルビーの鮮烈な赤さ
これらの豊かな色彩が、白黒作品なのに、確かに見えるのです
鮮やかな色彩でワイドスクリーンで、頭の中で見えるのです
カラーで撮る構想であったそうですが、当時の器材ではビルマロケは困難とされ白黒作品となったとのこと
本作はビルマロケの許可が遅れ、日本で撮った分だけで第一部、遅れて許可がでてビルマでロケ撮影した分で第二部として分けて公開されたそうです
監督は、第二部を止めて本当はロケ撮影分を第一部に加えて再編集したこの総集編で公開し直したいと願ったのにそのような結果になったそうです
これがもとで市川崑監督は日活を退社する事に至ったとのこと
1985年に市川崑監督が本作をセルフリメイクしたのは、そうした因縁があるのだと思います
カラーで撮り直ししたい
もっと完全なビルマの竪琴を撮りたい
その気持ちが如何に強かったか伺えます
リメイク作品は是非ともオリジナルのこの白黒作品を観てから、リメイク版でそのカラーを確かめてみたいものです
三國連太郎の隊長が見事な名演です
悪役が多いこの人が、演じることによってこの隊長の人間性の深みと厚み、ヒューマニズムが引き出されていると思います
兵隊の西村晃もしかりです
老け役が得意な北林谷栄の演じる物売りのビルマの老婆も見事でした
この時彼女はまだ45歳!
29年後の1985年版でも同じ役を務めています
あの喋り方での不思議な大阪弁のもたらす雰囲気
忘れられないものです
監督の配役の眼力が如何に優れていたということです
音楽の力と白黒作品ながら色彩の力を極限まで引き出した圧倒的な名作です
数々の国際的映画賞を受賞するのは当然です
しかし本作はキネマ旬報のオールタイムベスト200にはランクインされていません
本当の意味の反戦映画であることが影響しているのかも知れません
情けないことです
今こそ分かれ目、いざさらば
映画「ビルマの竪琴(1956)」(市川崑監督)から。
戦争前・戦争中・敗戦後の日本軍の様子を題材にした映画は、
いくつも観てきたが、小隊の統制のために「合唱」を活用する、
それだけでも信じられなかったが、戦時中のドロドロした描写は少なく、
妙に清々して気持ちで観終わった。
それだけ、音楽に力があることを物語っているとも言える。
特に、泥だらけで精神も疲れているはずの彼らが歌う「荒城の月」は、
主線を歌うだけでなく、しっかりハモっていて、驚いた。(汗)
井上小隊が、戦時中どれだけ規律が守られていたかを説明しなくても、
この一曲の合唱を耳にするだけで、一致団結が理解できるのは、
メモに値した。
主役の水島上等兵が、井上小隊を離れ、訳あってビルマ僧となり、
竪琴演奏を通じて、仲間の日本兵に向けて別れを告げるシーンは、
繰り返して観ても、胸が痛くなるほど切ない。
その光景を思い出させる曲は「仰げば尊し」。
私たち世代は、卒業式の定番ソングとして、何度も口にした名曲であり、
歌詞の最後となる「今こそ分かれ目、いざさらば」が、
日本へ帰還する日本兵の仲間と、ビルマに残る水島との別れと重なり、
その光景が目に焼き付いて離れない。
静かな戦争映画だったなぁ。
P.S.
画面に表示された「ビルマ語」(ミャンマー語かな?)
記号みたいで、ポケモンの「アンノーン」かと思った。(笑)
・急に停戦って言われても信じない隊の気持ちもよく分かる ・最初うさ...
・急に停戦って言われても信じない隊の気持ちもよく分かる
・最初うさんくさかったおばあちゃんがすごくいい味出してたなぁ
・マジメで人が良い水島だからこその決意に納得しつつも泣いた
北林谷栄
戦後10年ということもあって、冒頭から反戦要素がある。白黒画面のおかげで重苦しい雰囲気は十分だ。キャストではリメイクで村長を演じていた浜村純が今回は伊藤軍曹。北林谷栄が同じ物売りのお婆さんというところがすごい。
それにしても「荒城の月」がこれほどまでに涙を誘う音楽に聞こえるとは・・・「埴生の宿」よりも感動的だった。
先にリメイク版を見ていたために、三国連太郎のナレーションがとてもいい。
インコが素晴らしい活躍
三國連太郎のイケメンなところにキュンとしましたが、なにせ白黒なので分かりづらい。
戦争映画というより青春映画だろうか…
とも思える仲間思いの、いやかつての日本って感じの映画です。
でも、物売りのおばあさんとインコと三國さんと最後の手紙と仰げば尊しはすごく良かった。
ただ、少し中だるんでしまったのは、私が戦争背景の映画が苦手だからかもしれません。
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