「すべての人の心にひめゆりの花を」ひめゆりの塔(1995) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
すべての人の心にひめゆりの花を
太平洋戦争末期の沖縄で、看護要員として従軍した女学生たち“ひめゆり学徒隊”の悲劇。
日本の戦争の歴史に語り継がれ、何度も映像化。
本作は4度目の映画化。1995年、戦後50年記念作品。後藤久美子、酒井美紀らが若い、若い!
古くは今井正監督&水木洋子脚本作が有名だが、こちらは実在の人物をモデルとし、史実に忠実に描いた一作。
先日見た『激動の昭和史 沖縄決戦』と被ってる点もあるが、こちらはあくまで民間人視点で、より戦争の不条理さや恐ろしさが描かれている。
彼女たちがいかにして最前線へ駆り出されるに至ったかを丹念に描写。
勝手に従軍させられ、勝手に追い払われ、民間人であるのにたったの一人も軍から護衛として就かず、地獄のような戦火の中を逃げ惑う。
序盤はちょっとお利口さんな作りかなと思ったが、次第に真に迫ってくる。(戦火の森の中を逃げてるのに、皆顔が汚れてないのは何とかして欲しかったが…)
遠くから、近場から、あちこちで砲撃、爆音、被弾…。その光景は壮絶。
何故彼女たちがこんな恐怖を身を持って体験しなければならない?
戦争の一番の被害者は巻き込まれた民間人。それをひしひしと訴える。
日本軍の非道さもゾッとする。
沖縄の老人の「日本軍が我々を守ってくれると信じていたが、間違っていた」という台詞がそれを痛烈に表していた。
散り散りになり、ひめゆり学徒隊の命運も分かれた。
絶望し集団で自決、逃げ込んだ洞窟内にガスが充満し窒息死…。
投降した一行、足を負傷し一人身動き出来ない者…辛うじて命は助かるが、米軍に助けられたというのが何とも皮肉。
逃げて逃げて、まだ戦火が迫ってない地で一時の休息。
名曲『花』が流れる中、川で水浴びをして遊ぶひめゆりの花々たちの笑顔が忘れられない。