必殺仕掛人のレビュー・感想・評価
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良くも悪くも昭和のアンチヒーロー
藤枝梅安。
名前がカッコいい。
殺し屋のことを「仕掛人」と呼ぶのはこのシリーズの中だけの造語のようなのだけれど、これもカッコいい。
時代劇はやっぱり名前が命だなあとつくづく思う。
この卓越したネーミングセンスの持ち主は原作者の池波正太郎。言わずと知れた時代小説の大家である。
池波正太郎といえば、藤沢周平、司馬遼太郎と共に「一平二太郎」と呼ばれ、昭和の中年男性から絶大な人気を誇る三大時代小説家の一人だった。
「一平二太郎」の作品群が全て中年男性だけをターゲットにしているというわけではないだろうけれど、本作は本質的には中年男性向けのアクション時代劇である。
本作はテレビシリーズが先行しているのだけれど、ドラマの方で藤枝梅安を演じていたのは緒形拳である。本作の田宮二郎もミスキャストというわけではないけれど、やっぱり緒形拳の方が藤枝梅安というキャラクターに合っている気がする。
実際、本作の後に作られた第二作『必殺仕掛人 梅安蟻地獄』と第三作『必殺仕掛人 春雪仕掛針』は緒形拳に戻っている。
田宮二郎演じる藤枝梅安は甘いマスクと飄々としたキャラクターであまり裏稼業の人間という凄みは感じられない。そのぶん憎めない愛敬があって、製作陣は女性観客のことも意識して田宮二郎を起用したのかもしれない。
でも田宮二郎が演じることで多少雰囲気がやわらいでいるとはいえ、本作が中年男性向けの娯楽作品だというのは変わらない。
藤枝梅安は表向きは腕のいい鍼医者だが、裏では金で殺しを請け負う仕掛人と呼ばれる凄腕の殺し屋である。生きていては世のため人のためにならないような極悪人を得意の鍼を使って人知れず抹殺するのが仕事だ。
ただ、ターゲットが本当に死に値するほどの極悪人なのかどうかは元締めの判断に委ねられていて、梅安自身が裁きを下すわけではない。
梅安自身が自分の意思で裁きを下すわけではないので、いわゆる勧善懲悪的なスッキリ感はあまりない。
梅安はあくまで金を貰って人を殺す実行役でしかないのだ。なので、今ひとつ感情移入しづらくてモヤモヤ感が残る。
でも、昭和の中年男性たちはこういう、善とも悪とも判断しづらいグレーゾーンの領域にいるアンチヒーローを受け入れる、良く言えば懐の深さ、悪く言えばルーズさがあった。
梅安はけっこう女好きでもあり、女郎屋通いもする。結局は女郎にうまくあしらわれて何もできなかったというような三枚目的なところもあり、なんとなく短髪の田宮二郎がルパン三世みたいに見えてくる(笑)。
こういう、平気で女郎屋通いをする女好きというキャラクターも、当時の中年男性たちは普通に受け入れていたのだが、最近はアウトになりつつある。
本作の藤枝梅安は、良くも悪くも昭和のアンチヒーローだと言えるだろう。
かつてはボンドガールを取っ替え引っ替えしていた昭和の絶倫男ジェームズ・ボンドもダニエル・クレイグの代になってからは一途な愛を貫くキャラクターになり、女性観客にも受け入れられるようになった。
藤枝梅安は昭和から平成にかけて四度テレビドラマ化されていて、いずれも自分は未見なのだけれど、規制の厳しいテレビの世界でお茶の間受けするようなキャラクターに変わっていったであろうことは想像に難くない。
そして、最後の映像化から十数年の時を経て、令和になって突如として藤枝梅安は豊川悦司主演で蘇った。
自分の中では仕掛人・藤枝梅安というのはあくまで小説のシリーズであり、こっそりと(?)読んで楽しむものだった(笑)。
だからいずれの映像作品にも食指が動かず、ずっと未見だったのだけれど、今回初めて田宮二郎版を観て、豊川悦司版にも興味が湧いてきた。
昭和のアンチヒーローが令和でどのように描かれたのかこの目で確認してみたくなった。
人知れず仕掛けて仕損じ無し・・・
いや〜、驚きました。
TVシリーズで人気のあった作品の映画化って、この頃からあったんですね。主役が変わっていたんで、てっきり違うものと思ってたら、音楽がテレビと同じでした。(変わったのは仕掛人の2人だけ?)
必殺シリーズ大好きなんですが、見始めたのは「必殺仕置人」からで、1作目である「必殺仕掛人」は後付けの知識しかなく、本編は殆ど見た事ありませんでした。
主役の藤枝梅安は緒形拳さんのイメージが強く、初めて田宮二郎さんの梅安を見ましたが、これはこれで面白かったです。
ただ、自分の頭にある必殺シリーズは、晴らせぬ恨みを成就させるリベンジものって印象が強いのですが、本作品はそれが薄いですね。依頼を受けて実行するプロの殺し屋って感じでした。
仕掛けて仕損じ無しですね。
(でも、本作品では失敗して殺されかけちゃうんだけど・・・)
【ネタバレ】
懐かしの必殺シリーズですが、ちょっと雰囲気が違う感じで楽しませてもらいました。
野際陽子さんも若い。仕掛けの対象となる悪人で、梅安に殺されちゃうんですが、実は妹だった。結局、最後まで梅安が気が付かなかったってのも、なかなか面白い展開でした。
タイトルなし(ネタバレ)
『“やし”とは、縁日など、人出の多いところで見世物や物品の販売を行う者』
つまり『フ○テ○の寅さ○』
つまり、裏社会の抗争と言う事だ。それを、あの映画は喜劇にしている。今は教育的な観点で排除している所が多い。勿論、それが良いか悪いかは別だか、賭博や薬物は法律で禁止されている。
限りなく、黒い社会の男を『癒やしの対象』として描いているのだ。それは兎も角、この仕掛人は毒が完全に抜けたコメディになってしまっている。非常さが全く無い。まるで、ピンク映画のようだ。2回目の鑑賞のようだ。
梅安大ピンチ!
田宮二郎演ずる藤枝梅安は初めて見た。ついでに西村左内が高橋幸治になっている。元締めである音羽屋半右衛門役は山村聰、岬の千蔵は津坂匡章(76年に秋野大作と改名)だ。
梅安、左内、半右衛門がそれぞれ活躍するという豪華な設定だが、TV版とは違い、池波正太郎原作本に忠実であるとのこと。そして、仕掛ける相手の下見調査も徹底していて、最初に殺したお照(川崎あかね)の濡れ場も覗き見る・・・そこまでせんでも・・・
左内は貧乏暮らしで将棋打ち。風呂屋で喧嘩を仲裁したところから八丁堀の峯山(室田日出男)から町方同心に誘われるも、紹介料が三十両かかるという。また、峯山は悪徳警官そのもので町民から金を取り、私腹を肥やしていたという悪人だと分かる。
盗人稼業の親分みたいな孫八とその情婦を殺すよう依頼された仕掛人。梅安が二人とも殺そうとするが返り討ち。簀巻きにされたところを千蔵に助けられ、その晩のうちにもう一度仕掛けるという荒技。ボコボコに痛々しい姿で殺しをやるが、女(野際陽子)の目が生き別れになった妹のような気がしてならなかったという話。また、孫八を殺したものの、上には上がいて、香具師のシマを取り返したと思った為吉がおじきである大五郎に殺される・・・大五郎に利用されたと知った半右衛門が掟破りの罪により処刑。
全体的に結構重苦しい雰囲気だった。梅安が殺されるんじゃないかとヒヤヒヤさせられたけど、死ぬわけないよね。ただし、次回作からはテレビ版と同じく緒形拳が演ずることに。
こんな必殺あったんだ、知らなんだ。 元締は山村聰、ラストアクション...
田宮二郎の梅安
仕事じゃないのね
田宮二郎版仕掛人
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