劇場公開日 1963年3月17日

「しみじみ、いい映画だった。」非行少女 M.Joeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5しみじみ、いい映画だった。

2022年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画を見終わった後も、心に余韻がいつまでも残る、いい映画だった。全般的に暗い映画であるが、貧しく家庭環境の問題から一人飛び出した主人公の中学生の女の子。決して非行少女ではなく、誰も自分のことを思ってくれない寂しさ、葛藤から周りにぶつかっていく。そういう強さは持ち備えているからこそ、一層寂しさが漂う。幼なじみの浜田光夫がこの子を構ってあげることから彼女も心を開く。
いじめる人もいるが助けてくれる人もいる。ケンカもし、ストレートに感情をぶつけ合っていく。二人の仲も親同士の問題もあり、周りは認めるどころか引き裂こうとする。二人には安心して心を許す相手は他にいない。
彼女は学校には行けず、彼も生きるためには仕事もしないといけない。別々に離れて仕事をするが、会えないことで辛い日々が続く。そうして、ある事件が起こり、そのことが原因で彼女は施設に預けられる。
水商売をしている叔母が引取に来るが、教師がそういうところには返す訳にはいかないとキッパリ断るところが気持ちいい。
彼女は決断する。洋裁の技術を身に付け、大阪に就職することを。彼には別れを告げずに、町を出て行くことも。教師は彼に合う方がいいと勧めるが、彼女は決断する。
出発間際に、彼がこのことを知り、彼女を引き戻す。彼の説得に、彼女は混乱し喫茶店の中で激しく泣く。しかし、彼は立ち上がり、列車に彼女を連れて行き、乗せる。
彼は三年後に会えることを期待して。

彼女は心に深い傷を持っている。しかし、人に甘えることなく、しっかり自分の力で立とうしている。彼からも一旦、捨てられたと感じているものの、自分に優しくしてくれた彼を忘れらない。映画の途中から、彼女の心の動きがこちらにも伝わってくる。
とてもいい映画である。

20140213@広島市映像文化ライブラリー

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M.Joe