破線のマリスのレビュー・感想・評価
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マリス malice〔mǽlis〕n. 悪意、敵意、犯意
息子のストーキング能力高すぎぃ!いや、でもかなり面白い作品だと思う。
信頼させようとして喫茶店のマスターの偽物をつかうくだりなんかは、よく考えられてる。
サスペンスならしっかりと決着を。リアルならリアルで。
罠に嵌った敏腕TV編集者の恐怖を描く物語。
当時人気絶頂だった黒木瞳と、陣内孝則が共演したサスペンス。黒木瞳の演技も、陣内のサイコぶりも見事ですね。
マスコミに対する問題提起をメインテーマにしていて、その点は見事に描かれていたように思います。
ただ、サスペンスとしては、弁護士殺人事件を見事にスルーしてしまい、その点は評価が厳しくなります。
「リアル」に考えれば、必ず犯人が見つかるわけではありませんし、主題が「マスコミ」なのですから、考えようによってはありなのかもしれません。
ただ、逆に「リアル」に考えれば、息子が盗撮犯っという設定は、どう考えてもあり得ない。10才の子供が夜中に外出してビデオを撮って、しかも母親に送りつける・・・流石に興ざめします。
この設定をどうしても使いたいのであれば、例えば、息子が自分より仕事を取った母親を憎んでいて、それでも辣腕編集者の母親を尊敬していて・・・自分の編集を母親に認めさせたかった・・・なんて設定があればギリギリ納得出来るのですが、そんな伏線はありませんでしたし・・・
当然ですが、評価は厳しめです。
話が散らばり過ぎ…
弁護士自殺の真相はどうなってしまったの?容疑者と疑った陣内と完全なるストーカー合戦。結構グダグダで真相にたどり着けず、挙げ句殺してしまい逮捕され、盗撮してるのは小学生の息子だったという、あり得ない気持ち悪い終わり方。喫茶店まで仕込んで、黒木を嵌めたのは何だったんだろう。
タイトル負け
波線とは画面に映像を映し出す走査線、マリスとは悪意とのことだそう。カッコイイタイトルだ。
映像を編集する側に悪意があろうとなかろうと、その映像によって登場者の運命が左右されることは必然。報道に携わる人間はそのことを肝に銘じて取材と裏取りを怠ってはならない。
報道の鉄則と思われるこの作業をベテラン編集の主人公が全く行わないことに疑問。何を過信しているのか、自分の主観で切り貼りした映像で、間違いに気づいても謝罪もせず、プライベートのフラストレーションも思い切り仕事に持ち込みながら狂気に猛進していく。
カッコイイタイトルの割に、主人公の行動は稚拙で、オチもミステリーというよりサイコホラーだった。
真犯人は誰だったのか?
ジャーナリズムとは
最初からサブリミナル効果を狙ったインタビュー番組を作るシーンはすごい。編集次第で見ている人が違った印象を持つテクニック。とにかく前半は凄い!
殺されたオンブズマンの弁護士を執拗に追ってる男がいると内部告発テープを受け取ったのだが、それは警察の事情聴取を受けた陣内孝則。ニヤッと笑う癖のため、それを利用した遠藤があたかも犯人であるかのような編集をしてしまう。そして彼は妻子に実家へ帰られて、地方へ左遷される。彼によってテープ提供者を辿ろうとすると、そいつは郵政省とも関係なく、かなり仕組まれたテープだとわかったのだ。
やがてハメられた陣内は黒木をつきまとう・・・完璧なストーカーとなった男に豹変したため、黒木は逆に真犯人じゃないかと疑い、プライベートまで撮られていた腹いせに陣内の荒れ果てた一軒家までも侵入して撮り返す。
警察よりもTV報道のほうが崇高なんだという自尊心。自分の報道こそが正義の姿だと勘違いした女。徐々に陣内に感情移入してしまい、黒木瞳を陥れたくなってくるほどだ。彼女は離婚した夫が再婚する事実を聞いて更に精神を痛めた。息子にも会わせてもらえなくなる。すでに自分を見失った黒木は口論の末陣内を突き落として殺してしまった・・・
自分を隠し撮りしてたのは誰なんだ・・・などと色々考えると陣内がもっとも怪しいけど、それだと面白くない。ラストには驚愕のホームビデオ撮影者が・・・さすが野沢尚だ・・・
冷静さを失い崩壊していく人格
総合:55点
ストーリー: 40
キャスト: 70
演出: 75
ビジュアル: 70
音楽: 60
テレビ局が自分の描きたい物語を無理やり作って都合よく情報を操作したい。そんなことばかりやっているマスコミの恥部を問題にした映画なのかと思ったのだが、その後は汚職やそれに関わる殺人の疑惑が出てくるし、その事件の報道とそれに巻き込まれる被害者の陣内孝則が出てくるし。それなのに事件の真実が何かはっきりしない。だから結局何がいいたい映画なのかわからない。物語としてはちょっと破綻しているし、それを楽しめる映画ではない。
だけど黒木瞳に恨みを抱き復讐に燃える陣内孝則のストーカーぶりと、それに怯える黒木瞳の精神的に追い詰められていく様の緊迫感のある演出がいい。彼は黒木瞳の作った悪意ある作為的な映像のために勤務先からいわれのない冷たい仕打ちを受け居場所をなくし、それなのに家庭からも見捨てられてしまい、その恨みの負の力を支えにかろうじて生きている。見ていて怖さを感じるくらいだし、くだらないホラー映画よりも見ていてよほど重圧がある。人の恨みとはかくも人を変えて悪鬼にするものだという痛い描写がいいし、ストーカー行為のような荒れた行動や汚れるままの家が彼の精神状態も表す。
またその状況では冷静さを欠いた黒木瞳のやることもまた支離滅裂で痛い。反撃のつもりなのか自己正当化のつもりなのか、勝手に相手を殺人者扱いし隠し撮りし家にまで侵入しという馬鹿げた自分勝手さが、第三者的立場から冷静に見て哀れでもあり彼女の罪深さからして自業自得でもあり、そして自ら巻き起こした嵐に巻き込まれて崩壊していく人格の過程を楽しめるという意地悪な見方もしてしまう。わけのわからない映画だったのだけど、この部分の精神の崩壊していく演出だけ見れば合格点でした。物語が何かの主題をもってしっかりと構成されていれば、かなりいい映画になれただろう。
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