「移ろいゆく季節(とき)の中で」麦秋 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
移ろいゆく季節(とき)の中で
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紀子三部作第2作。
Blu-ray(デジタル修復版)で2回目の鑑賞。
「小津調」の確立された様式美の中で、日常を丁寧に淡々と描写していくことによって、くっきりと浮かび上がって来る、普遍的な人間の営みと想い。全ての小津映画に共通する点ではありますが、他の作品たちと同様に、本作の豊かな人情の機微も静かに心に染み入って来ました。
娘の結婚が物語の中心に据えられているのは前作「晩春」と似通っていました。ですが同作では、父親と娘の関係性を描いていたのに対し、本作では娘の結婚に揺れ動く大家族の姿を描いていたところに違いがありました。
変化しないものなど、この世には無い。全ては時と共に移ろい行く定めの中にある。紀子の友人たちも結婚して、友情よりもそれぞれの家庭が優先されるようになる。
一緒に住んでいる家族だって、紀子の結婚問題で若干の不協和音が走ってしまったし、紀子が結婚して夫がいる秋田へ行くことになったのを契機に、別々に暮らすことになりました。
同じ関係は永遠に続かない。だがそれは、悲しいことではない。はじめは寂しいかもしれないが、その変化は新しい幸福への第一歩なのだと思いました。それを象徴するように、見事に実った麦畑が映し出されるラストシーンが印象的でした。
※修正(2022/01/05)
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