「驚愕の反戦映画」野火(1959) 吹雪まんじゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
驚愕の反戦映画
市川崑曰く、「「野火」は戦争という悲劇を、徹底的に客観視しようとしたんです。」なるほど。確かにこの作品はひたすら「事象」が映し出されて、感情の吐露といったものはほとんど見受けられません。漂っているのは戦争に疲れ果てた兵士達の虚無感。「お国の為に頑張るぞ!エイエイオー!」なんてやってる兵士は一人もいません。実際はどうだったのかはわかりませんが、この空虚な描写には説得力があり、非常に怖ろしいと感じました。
エンターテインメント性を削ぎ落とし、戦争がもたらす「倫理観の歪み」を描いた作品。「倫理観の歪み」については「ジョニーは戦争へ行った」のレビューでも少し触れましたが、「野火」はもっと生々しく描かれていました。極限の状況が続く中、人は正気を保てるのか?主人公が最後に選んだ道は…?神も仏もいないとは正にこのことである。
※本作は川越スカラ座にて鑑賞。川越スカラ座は、外観、内装含め昭和の香り漂うレトロな雰囲気のコミュニティシネマですが、資金難による閉館が迫っている状況です。現在「川越スカラ座閉館回避プロジェクト」を実施中で、LINEスタンプや川越スカラ座グッズの購入による支援が可能です。(詳細はHPにて)館内にて募金も行っております。ご興味を持たれた方は是非、この独特な雰囲気の映画館を体験してみてください。
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