「傑作ですがあまりにも重いです」野火(1959) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
傑作ですがあまりにも重いです
地獄絵図
絵本 地獄――千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵
という大判の絵本があります
そのお寺に所蔵されている十六幅の絵巻をもとに構成したものだそうです
1784年(天明四年)、江戸の絵師によって描かれたものとのこと
40年程前に発行され、一時期ブームにもなりロングセラーを続けているそうです
今もAmazonでも買えます
まさにその絵本の中の地獄の光景が展開されます
というより、この絵本を映画化したものだったのではと思ってしまう程です
その中にこのような一節があります
三途の川をわたり、閻魔大王の前に出て、針地獄の宣告を受ける五平。
「こんどだけは生きかえらせてやろう。だが、おこないをあらためなければ、このつぎこそ地獄だぞ。地獄がどんなところか、とっくりとみせてやろう。
もとの世にかえって、みなのものにはなしてやるがよい……」
この閻魔大王の言葉が本作のテーマです
戦争は華々しい栄光の物語もあります
一方、勝敗は裏表です
負けた時の悲惨、敗者の無惨、地獄絵図
これもまた戦争の一面です
その両方を観て、私達は戦争という恐ろしい現実を知らねばなりません
なぜなら国家や民族の自立と独立の為にはやらざるを得ない事態もあり得るからです
より一層の地獄絵図を子々孫々にまで残すことになるからです
希望的観測、教条的イデオロギー、夢想的空想的な平和主義・・・
そんなものが戦争を引き起こすのです
私達は徹底的にリアリストで在るべきなのです
究極の反戦映画であるのは間違いないでしょう
しかし本作はそこをさらに超えて、人間とは何か、どう生きるべきかにまで踏み込んでいます
傑作ですがあまりにも重いです
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