劇場公開日 1977年10月8日

「角川映画の特徴を良く示している作品」人間の証明 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5角川映画の特徴を良く示している作品

2019年11月12日
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鑑賞方法:DVD/BD

角川映画というジャンルがかって日本映画にはあったという見本的な作品です

斜陽で貧乏臭い映画しか作れなくなった日本映画界に洋画並みの予算とスケールで映画を撮るための為のビジネスの枠組を作ったところが大きなポイントだと思います

本作はその特徴がよく出ている作品です
海外ロケシーンを多用して、しかも現地の有名俳優を起用して、単なる風景程度をちらりと挿入する程度のそれまでの日本映画とは一線を画しています
またセットも豪華で大掛かりな撮影も取り入れるのも特徴です

本作でもNYシーンは付け足しではなく、松田優作が現地で芝居をしてカーアクションまで派手に撮っています

ニューオータニでのファッションショーのシーンも山本寛斎の手になるものでクオリティはえらく高いものに仕上がっています

大野雄二の40年経とうとも全く古びる事のない音楽
ジョー山中の素晴らしい歌唱の主題歌
そして存在感のある見事な演技

松田優作も名演とは言えないものの、非凡なる存在感は特にNYシーンで顕著に発揮されています
岩城滉一が、NYの風景に浮き上がっているに対して松田優作は溶け込んで違和感が無いのです

角川映画が日本映画の再興に貢献したのは間違いないことだと、これらのことからも頷けます

しかし本作は全体として観ると、映画としては少々粗削りだというのが残念なところです

松山善三というあの人間の條件の脚本を書いたような巨匠が何故にこのような詰めの甘い脚本で良しとしたのか不思議でなりません

本作の脚本は公募で競われたそうですから、あまり練ることも出来なかったのかも知れません

このような洋画と日本映画の格差をなくし、舞台も世界に広く求めるスケールの大きな映画
そして日本の優れた俳優が海外に活躍の場を設けるべきであったと思います

40年前、バブルの10年も前にこの課題に真剣に取り組んだという意味では革新的であったと思います
その道を本作は切り拓いたともいえると思います
ただ、もっと後に続くべきであったと思います

あき240