「沖縄」日本列島 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
沖縄
「日本はアメリカに255の基地を提供している」というナレーションで始まる。CID(アメリカ陸軍犯罪捜査司令部)の通訳主任という仕事。アメリカ軍人、軍属が関与している殺人など捜査するところだ。通訳なんだから、この水死体の事件はあくまでも個人的。
1年前の事件、死体の捜査権は日本にあるのだが、特例ということで米軍が死体を回収していたのだ。15日後、CID本部から水死ではないと発表された。捜査はそこで打ち切られたが、もっと大きな組織にもみ消されたのではないかと推論した。秋山はかつてのリミットの生活を洗い始めた。リミットと結婚していた女性・小林厚子(木村不時子)を訪ねると、女学校時代の秋山の教え子だった。病弱だった彼女が死に際に言った“涸沢”という個人名と“ザンネル”という単語を足がかりに次々と関係者を当たる。
巨大なスパイ組織の存在。そして麻薬密売と贋札作りの組織。ぼんやりとした形は見えてくるけど、核心に触れようとすると重要人物が殺されたりする。特に、涸沢とも繋がりのあった元スパイ組織の佐々木(佐野浅夫)が死に、妻(北林谷栄)が泣き崩れるところは印象的。一方、印刷機ザンネルの技術者である伊集院の娘・和子(芦川)も沖縄で生きているかもしれない父に思いをはせる。そして、秋山の甥が通う幼稚園の先生・椎名(西原泰子)がスチュワーデスとなり、しばらくして殺された。容疑者のサミュエルは国外逃亡してしまったが、映像を見る限り、犯人らしきはスパイ組織のロベルト。これも捜査が行き詰ってしまう・・・
行き先が見えなくなった秋山は沖縄に行く決心をする。伊集院の消息を確かめるため。さらに組織の存在を確かめるため・・・数日後、和子のもとへ訃報が届く。授業中だから後にしてもらいたかったのに、どうしても今話したいという原島からだった。それだけでピーンときてしまったのだ。学校外で写生の授業。走る和子。汗だくになって聞いたのは秋山、そして父であろう中国人名の人物が殺されたこと・・・泣き叫ぶ芦川いづみがとても強烈。泣くというより、遠吠えのようだった。
暗躍するスパイ組織を追及するのがストーリーの中核なのだが、真のメッセージはそんなところにはない。日米安保反対集会のドキュメント映像も出てくるが、基本的には米軍に対する嫌悪感を見せつけてくれる映画なのだ。インタビューしているときでもジェット機が飛んで会話を遮るし、スパイ組織の存在を掴もうとするたびに命を狙うかのように登場してくるのだ。さらに戦争が生んだ副産物としての国際スパイと麻薬密売という巨悪の存在。生き残った者も口を閉ざさねばならぬ現実をさりげなく盛り込んでいる。そしてCIDという組織に在職しているのが不思議なくらいの秋山。なにしろ、妻を米兵に暴行され殺されたという過去を持つ男なのだ。
日本列島というタイトルの意味。製作年は65年なので、まだ沖縄が日本に返還されてない時代である。沖縄の事件をとことん追いたい原島の沖縄転勤が決まり、出発する際に「日本の夜はもう味わえないんですね」と言われたところ、「沖縄だって日本列島だ」と答えるところで理解できた。