日本誕生のレビュー・感想・評価
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「大和から急げば1日」のどこに活火山が…?
ゴジラのDVDシリーズの方で見ました。東宝映画1000本記念だそうで、スター総出演の凄い映画です。コミカルなシーンにはエノケンが出ていたり、腕力の強い神様役で力士の朝汐(初代)が出ていたりしますし、アマテラスは原節子です。でも、ここでは伊福部昭の音楽についてだけ書くことにします。
この映画は古代日本を描いていますが、例えば、ヤマトタケルが熊襲征伐に向かう前、男たちと武士の舞を舞うシーンがあります。ここで歌われているのは、古事記にある「久米歌」そのものです。もちろん古代のメロディーはわからないので、音楽は伊福部が雅楽風に想像したものですが、ほかにも古事記歌謡を引用しているらしいところがあり、伊福部がまじめに研究していることが窺われます。
また、熊襲が宴会を開いているシーンでは、中国風の歌と踊りが演奏されます。恐らく、九州は中国大陸との文化交流が進んでいると想像したのでしょう。また、東国出征の中で、相模国での宴会シーンでは、驚くべきことにアイヌ民謡の音楽と踊りが引用されているようです(特徴的な1拍子のリズムの踊りです)。これは、古代東国の文化を、のちの北方民族のそれに近いものと構想したのだと思います。
伊福部は古代日本の音楽を考えるに当たり、東アジア全体の音楽の中で位置づけようとしていることになるんですね。これは大きな構想で、すごいと思いました。なお、東国出征に疑問を持ったヤマトタケルが引き返すことを決意し、兵士たちが喜んで望郷の歌を歌うシーン、古事記・日本書紀の「大和は 国のまほろば…」が歌われていますが、雅楽風というより和歌披講の節のようなメロディーで、これを大和土着の音楽と考えているのではないかと思いました。以上、マニアックな感想ですみません。
天の岩戸の前の狂騒のシーン、乙羽信子のダンスがユニークで素晴らしいですが、ここで伊福部が書いている音楽はみごとです。これは北野武監督の「座頭市」フィナーレのタップダンスと並んで、日本映画を代表するダンスシーンだと思いました。
特撮としては最後の大噴火のシーンが素晴らしいですが、でも、この場所は「急げば大和まで1日で着く」はずのところのはずなんです。いったいどこにそんな火山が…?
日本神話を知らない人には不向きか
オールスター国生み神話!
東宝映画1000本記念作品。
DVDで鑑賞。
倭健命の熊襲征伐や須佐之男の大蛇退治など、日本の国生み神話における有名エピソードをぎゅぎゅっと凝縮し、オールスター・キャストを擁して描いたスペクタクル大作。
「古事記」や「日本書紀」は未読なので単語は聞いたことあっても詳細を殆ど知らなかったこともあり、ダイジェスト的にまとめられていた本作は格好の入門編だなと思いました。
ダイジェスト、と云っても本編は3時間もあって結構長い映画だなと構えていましたが、全く長さを感じることなく、夢中になって観ていたせいかあっと言う間でした。
特撮ファンとして見逃せないのが、円谷英二特技監督による八岐大蛇の演出。後のキングギドラへと続く首の操演は、それぞれの首が意思を持ち動いているかのような滑らかさで、すでに円熟の域だなと思いました。スタッフがスタジオの天井に上がり汗水垂らしながら作業していたのだろうなと想像すると、今だ語り継がれていることを考えると、その労力は充分過ぎるほどに報われているのではないかなと思いました。
当時見たらとても贅沢な映画だったのだとは思います…が。
2020年に観ると、出演者の豪華さや演出効果のインパクトがいまいち感じられず、同時に、話も単調なうえに1つひとつのシーンがやたら長く、日本神話の何を伝えたい、というパッションのようなものを感じ取ることができませんでした。日本神話はこういうストーリーである、という教育映像としてはよいのかもしれませんが、この描かれ方では、せっかく日本神話を知っても、日本人であることやこの国土に生まれ育ったことを誇りに思ったりなど到底できず、かえって性格の悪い登場人物ばかりが目について、日本的な良心を持った人物はみんな死んでしまい、なんだか悲しくなりました。古事記にそう書いてあるのだから仕方ないと言われればそうなのですが、それを映像化しようというモチベーションが、どこにあるのか、分からなかったのです。
日本武尊を演じる、主役・三船敏郎さんの女装にぶったまげ
映画「日本誕生」(稲垣浩監督・円谷英二特技監督)から。
1959年10月25日劇場公開日とはいえ、
大物俳優の、学芸会ばりの演技を鑑賞するだけでも、
見る価値は大いにあると私は思う。(笑)
「原題:The Three Treasures」まで付いていて、驚いた。
さすがに181分の長編だから、途中「休憩」の文字が現れ、
この間に、フィルム交換をした様子が目に浮かび、楽しかった。
ストーリーは「日本武尊の波乱の生涯を中心に
日本の国造りをえがくスペクタクル」なのだが、やはり笑える。
私の住んでいる場所がロケ地だったという情報を得ての鑑賞だったが、
出演者には申し訳ないが、久しぶりに笑った「お気に入り」である。
日本武尊を演じる、主役・三船敏郎さんの女装にぶったまげて、
さらにその姿を見て「美しい、どこから来た、もっと近くに来い」と
引き寄せる俳優陣、よく笑わなかった、と感心させられる。
台本があるとは思えない、何度も息が合わない戦いのシーンや、
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)をやっつけるシーンなど、
もうこれは、見てもらうしかないな、が本音である。
「この国で1番強い立派な男と言う意味」の「日本武尊」が、
何度も泣くシーンには、正直、ほっこりさせられた。(笑)
特撮あり、戦いあり、恋愛あり、笑いあり・・何でも有りのこの作品、
文句なしに、私の「生涯ベスト5」入り候補である。
オールスター東宝祭
東宝映画1000本記念作。1959年の作品。
「古事記」「日本書記」を題材にした神話スペクタクル。
三船敏郎を始めオールスターキャスト。上映時間は3時間。
“THE超大作”。
スケール豊か、見せ場もふんだんに設け、日本神話を見易い娯楽活劇になっている。
しかし、演出や各々のエピソードは単調と言うか平凡と言うか、超一流スターたちが仮装して大真面目にやってる学芸会と言うか、そんな印象は否めない。
主だったストーリーを順々に…
この世の始まり。多くの神々が生まれ、伊邪那岐(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の二人の神による国造り。
最も幻想的でなければならない開幕シーン。特撮は雰囲気を醸し出してはいるものの、演者が出ると急にチープな演劇風に。
八百万の神や高天原の神といった神々を演じるは、沢村いき雄ら東宝の名脇役たち!
話の主軸は、小碓命(オウスノミコト)後の日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の冒険詩。
兄・大碓命(オオウスノミコト)とのいざこざから大和の国を追われ、熊曾建(クマソタケル)兄弟征伐を命じられる。激闘の末目的を果たし、クマソ弟からヤマトタケルの名を与えられ…。
東宝は1994年にもRPG風の「ヤマトタケル」としても製作。
意気揚々帰国するも、休む間も無く東国征伐を命じられる。裏には、権力争いの陰謀が…。
敵ながら男気を見たクマソ弟、弟橘姫(オトタチバナヒメ)との悲恋、おばの倭姫命(ヤマトヒメノミコト)の教えを通じて、争う醜さ、虚しさを知るも、ヤマトタケルを亡き者にしようとする刺客たちが迫り…。
三船敏郎がさすがの力演。でも、ちょっと力み過ぎてる気も…。
どうしても思い出してしまうのは、クマソ兄に近付く為の三船の女装姿!
中盤挿入される天照大神(アマテラスオオミカミ)の天岩戸隠れ。舞い踊りは伊福部昭の迫力ある音楽も相まって、力強いシーンになっている。
特撮面一番の見せ場は、須佐之男(スサノオノミコト)の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)退治。
一転して、怪獣映画のような様式になるも、オロチのデザインや動きがちとチープ、八つの山と八つの谷をまたがる巨大さながら大きく見えたり小さく見えたりサイズ感が均等しない東宝特撮あるある。
どうでもいい余談だが、オロチは初代キングギドラのモデル。スサノオノミコトが退治の際にオロチに呑ませたのが“八塩折之酒”、即ち「シン・ゴジラ」の“ヤシオリ作戦”の語源である。
特撮面ではクライマックスの天変地異も大きな見せ場。大噴火、煮えたぎるマグマなどなかなかの迫力で、これぞ円谷特撮演出!
全体的には、まあまあといった所。
「十戒」や「ベン・ハー」などのハリウッド・スペクタクルと比べると、どうしても見劣り。
でも、映像化された日本神話の数々は興味尽きる事は無い。
加えて、日本神話に真っ正面から挑んだ東宝の意欲に座布団一枚!
現在の最新技術を駆使した映像表現、独自の解釈・新解釈で映画化してみてもいいかも。
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