虹をつかむ男のレビュー・感想・評価
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もしかしたら、西田敏行さんを二代目寅さんにするための公開フィルムテストだったのかもしれません
虹をつかむ男
1996年公開
あー面白かった
観て良かったと心底思いました
男はつらいよシリーズ50作を制覇して寅さんロスにお困りなら、まず本作をお勧めします
時系列にするとこうなるそうです
1996年8月4
渥美清逝去
男はつらいよ第49作「男はつらいよ 寅次郎花へんろ」製作中止
同年9月26日 本作の製作発表
同年12月28日公開
つまり渥美清の死去を受けて僅か1ヶ月半で企画をゼロからスタートさせて3ヶ月で撮影を終えて、正月映画の寅さんの興行スケジュールに穴を空けないようにした作品です
なので、本来なら秋から寅さんの49作の撮影計画の仕掛を流用して
その作品に出演予定だった俳優がそのままスライドして出演しているようです
といことで本作はいわば、寅さんシリーズのエピローグという体をなしています
ラスト間近に男はつらいよ第一作が映画館で上映されるシーンがあります
渥美清さんの唄う主題歌が流れてそれがそのまま本作のエンドロールにシームレスになっていきます
そこに「敬愛する渥美清に、この映画を捧げる」とでます
主人公は西田敏行が演じる徳島県の田舎町で名画座を経営するかっちゃんの愛称で町のみんなから親しまれている50歳程の男
そこに東京は葛飾柴又の吉岡秀隆が演じる青年が親父と大喧嘩して家を飛び出して、その田舎町の名画座のオデオン座に雇われて、それから彼が目撃するオデオン座のいろいろなエピソードを描きます
だから寅次郎が柴又を飛び出して
啖呵売の兄貴に弟子入りして寅さんになるお話にすこし似ています
西田敏行の演技は釣りバカ日誌のハマちゃんのギャグ風味を抑えて、渥美清さんの雰囲気に極力寄せようとしていると感じられます
観ていて、このまま寅さん二代目を襲名してもいいのでは?と思えてきます
かっちゃんの性格は基本的に寅さんと同じです
調子が良くてお人好し、女性に対しては好意を示す事ができません
違うのは映画館主だけに映画にやけに詳しく映画愛に溢れています
寅さんのアリア
寅さんファンなら良くご存知の立て板に水のごとく独特の口調で一人語りをぶって一同が固唾をのんで聞きほれる名物シーンです
寅さんのアリアならぬ、かっちゃんのアリアが本作では登場します
「ニュー・シネマ・パラダイス」
「鞍馬天狗・天狗廻状」
「野菊の如き君なりき」
特に「かくも長き不在」は長く語られあたかも一本観たような気になるほどです
いい映画とは?
身につまされる映画だ
という会話があります
「かくも長き不在」をせっかく上映しても、つまらないと言ったり
寝てしまう男客、ジーンと刺さっているマドンナとの対比も良いジーンでした
田舎町がまるでパリの裏通りのように素敵に見えました
このあと、雨に唄えばの再現シーンがあります
このようにこのほかにも沢山の映画の名前やエピソードや一場面が挿入されたりして映画愛に溢れた作品になっています
いくらいい映画であっても、それを上映する人達がいるから、多くの人々に観て貰えるとの台詞が幾度か語られます
マドンナ役は田中裕子さん
1982年の第30作「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」から14年後です
本来なら製作中止になった第49作のマドンナの予定だったそうです
主人公のかっちゃんといい感じになるのですが結局寅さんと同じように、かっちゃんのあと一押しが足らず彼女を逃してしまいます
この辺りのシーンは寅さんの映画を観ているような錯覚に陥るほどです
もしかしたら、西田敏行さんを二代目寅さんにするための公開フィルムテストだったのかもしれません
彼は釣りバカ日誌シリーズの看板俳優ですからそれは無理です
それでも、それを望むお客さんの声が圧倒的にあったならもしかしたらということもありえたのかもしれません
結局、寅さんシリーズに二代目は無く、釣りバカ日誌はこのあとも10年以上続きます
2019年には寅さんシリーズも50作が正式な最終作として完結しました
そして西田敏行さんも昨年2024年10月にお亡くなりになりました
全ては過去の事になりました
タイトルの虹をつかむ男とは、1950年の同名の映画からの由来だそうです
とは言え虹とは、困難な状況の後、良いことが訪れる前兆、または神聖なメッセージを伝える存在ですから、西田敏行さんがそうなるかもという願いが込められていたのかも知れません
蛇足
徳島県光町はお遍路で有名なお寺がある町だそうです
オデオン座はセットではなく、徳島県美馬市脇町にある脇町劇場として実在しているそうです
本作を記念して美馬市指定有形文化財となり一般公開されているそうです
監督の私的映画と言っても良いのでは
山田洋次監督が天国へ行った渥美清さんに捧げた映画のようですが、正直言ってあまり面白くは無かった。
山田洋次監督モノでは民子さんシリーズが好きな自分には少し合っていなかったようです。本作は少しバカで直情的な男がドタバタと行動する内容なので、寅さんシリーズが好きな人であれば楽しめるのかもしれません。
満男と浜ちゃんと寅さん
就職に失敗し葛飾柴又を出て旅に出た平山売は、徳島の小さい映画館オデオン座で働くことに。経営する白銀活男、映写技師の常さんや喫茶店の八重子さんら、周囲の人々となじんでいく。活男は、八重子にほのかな想いを抱いているが。
西田敏行の追悼放送で観賞。作品自体は、渥美清の追悼でした。様々な映画の話が挿入され、これは好きな映画を語る監督冥利に尽きるな、と感じました。「ニューシネマパラダイス」はまたいつか観よう。いろいろな作品を情感たっぷりに語る、「活ちゃんの話のほうがよっぽど」面白いというのは分かる気がします。常さんの横で、田中邦衛のものまねをする活ちゃんが笑えます。最後に新しく採用された新人役が上島竜平で、当時であれば西田敏行と似てるからと笑えますが、今見ると泣けてくる。
田中裕子がミスキャスト。残念。
寅さんロスで急遽製作された
徳島県脇町でロケを行い、芝居小屋を復活して地域は凄く盛り上がった。
映画に対する愛情感じるパロディとかそこかしこにあるが、何せ急拵えである。
物語はどこかで見たようなエピソードが多く、感動は少ない。
無料で映画会をやった話は高知県の映画屋さんのエピソードらしい。
「風の谷のナウシカ」を作中で流していたので驚いた。
映写機も1台で映してるから''流し込み''で上映してるのかと思ったがそんな描写がなかった。
芝居小屋兼映画館があっちこっちで潰れていたのを文化財として保護したり活用する機会にはなったと思う。
ラストの合成による寅さん登場もあるが、それだけで価値が上がるわけもない。
撮影に来ていた西田敏行の評判が脇町で悪かったのが印象深い(笑)
話よりも登場人物の存在感でみられる
総合75点 ( ストーリー:65点|キャスト:80点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:65点 )
「ニューシネマ・パラダイス」と「男はつらいよ」を組み合わせたような、映画愛を語る人情劇。映画の良さを作品の中に含ませ伝えるというよりも、映画の良さを劇中で主人公に語らせるというずいぶん直接的な演出をしながら、そこに人間関係のことをもってくる。話としてはそれなりだったけれども、映画のことで頭がいっぱいの映画馬鹿を演じる西田敏行と、彼との大人の恋の相手役の田中裕子とはじめとする彼らをとりまく出演者の存在感と演技が良くて、だんだんと共感して引き込まれた。
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