「ドラム缶から出られない」肉弾(1968) しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラム缶から出られない
クリックして本文を読む
Amazon Prime Videoで鑑賞(レンタル)。
自主製作ならではの自由度が監督の作家性を前面に押し出して、監督自身の体験が反映された濃厚なカオスに呑まれる。
シュールでコミカルな作風にも関わらず、否だからこそか、戦争の理不尽と残酷さを浮き彫りにしていました。
古書店での老夫婦との出会いや女学生との恋や幼い兄弟との交流は、普段なら何気無い幸福な日々のはずなのに、そのどれにも「戦争」が深く食い込んでおり主人公を苛んでいく。戦争が何もかもを目茶苦茶に壊していく怖さが身に沁みました。
終戦直前が舞台なのは、同時期につくられた「日本のいちばん長い日」と同じであり、姉妹的な立ち位置の作品だと思いました。もしかしたら本作は、監督が本当に語りたかったもうひとつの「日本のいちばん長い日」かもしれないな、と…
神も仏もありゃしない。ありがたい言葉も枕にしかならないし、最後は魚を炙る火を熾すくらいしか使い道が無くなる。
ラストの主人公の怒りの叫びは、世界が戦争を欲する限り止まらない。彼を早くドラム缶から出してあげなくてはな…
[余談]
カメオ的に豪華な俳優陣が要所要所で登場するのが贅沢でしたが、彼らを食うほどの大谷直子の存在感が素晴らしい。
コメントする