泥の河のレビュー・感想・評価
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加賀まりこ
宮本輝の小説は昔読み漁った記憶がある
泥の河も読んだような気もするが、全く覚えていない
出だしの芦屋雁之助が牛車に轢かれて死ぬ件など、何か思い出せそうなのに全く引っかかる物はない
子役の演技も、最初はぎこちない感じでしっくりこなかったが、次第にその控えめな演出の中に引き込まれて、子役を可愛いと感じる自分が芽生えてきた。
娼婦の加賀まりこと子役が対面するシーン、実にゾクゾクした。正面から加賀まりこがアップになると、その美しさに息を呑んだ。
ラスト、蟹を燃やすシーン。ここでこの本を買って読んだことを思い出した。蟹が喘ぐ姿、加賀まりこ、子役を窓から涙ながらに見送る少年の姿が、み終わった後も繰り返し頭に浮かんでくる。
とてもよかった
主人公の男の子の両親は、不倫関係から夫婦になったようで、元の奥さんが死の瀬戸際で、元夫の息子に会いたがるのがとても切なかった。
船の男の子が蟹に火をつけて遊ぶ。無邪気さと残酷さの境目がないところが子供らしくてよかったけど、主人公の男の子みたいに引く。事情を分かっていて引け目を感じているお姉ちゃんがかわいそうで可愛らしかった。
冒頭の橋で泥に台車の車輪がはまる場面が露骨に舗装道路に泥を敷いただけでちょっと残念だった。
悲しい
朝鮮動乱の新特需を足場に高度経済成長へと向かおうとしていた昭和三十一年。河っぷちの食堂に毎日立ち寄っていた荷車のオッチャンが事故で死んだ。ある朝、食堂の息子、信雄は置き去りにされた荷車から鉄屑を盗もうとしていた少年、喜一に出会った。喜一は、対岸に繋がれているみすぼらしい舟に住んでおり、信雄は銀子という優しい姉にも会った。信雄の父、晋平は、夜、あの舟に行ってはいけないという。しかし、父母は姉弟を夕食に呼んで、暖かくもてなした。楽しみにしていた天神祭りがきた。初めてお金を持って祭りに出た信雄は人込みでそれを落としてしまう。しょげた信雄を楽しませようと喜一は強引に船の家に誘った。泥の河に突きさした竹箒に、宝物の蟹の巣があった。喜一はランプの油に蟹をつけ、火をつけた。蟹は舟べりを逃げた。蟹を追った信雄は窓から喜一の母の姿を見た。裸の男の背が暗がりに動いていた。次の日、喜一の舟は岸を離れた。「きっちゃーん!」と呼びながら追い続けた信雄は、悲しみの感情をはじめて自分の人生に結びつけたのである。船は何十年後かの繁栄と絶望とを象徴するように、ビルの暗い谷間に消えていく。
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