劇場公開日 1954年7月27日

どぶのレビュー・感想・評価

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4.0今では描けない世界

2021年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

最近は1940年代50年代の映画を重点に見ています。溝口、成瀬、小津、新藤ら。そのあとで、改めて黒澤、野村芳太郎、今村昌平を見る予定です。映画論、監督論も読んでいます。
さて本作品ですが、新藤の作品としては普通ではないでしょうか。映画史上の意義としては「裸の島」に値打ちがあると感じました。狭い耕地を家族で耕しギリギリ生きていくところに農民の原像があるように思いました。もっと広げて生活者の原像と言っていいかもしれませんね。
「原爆の子」もいいですが、題材としては難しいですね。原爆そのものをどう見せるかという問題があって、過度にグロテスクな場面を入れることは控え、身近な人々の運命に視点を移します。
さて「どぶ」にもどりましょう。何と言っても乙羽信子の演技に圧倒されます。芝居に賭ける思いを感じます。宝塚から大映にスカウトされたが新藤と仕事がしたくて永田雅一に直談判したのですが、その熱意に感服します。「縮図」に続きこの「どぶ」の好演も特筆されるべきでしょう。脇役の人たちの顔ぶれを見ると、贅沢な映画だと感じます。大滝秀治などほんのちょい役です。どぶ川の情景、貧しき人々、今なら差別用語になる言葉・・・、印象に残るシーンが多くあります。これをあえて現代に置き換えるとすればどんな映画ができるでしょうか。厳しいですね。ロケ地がない、俳優がない、予算がない、そして最大の問題は見るお客がいないことです。今の監督さんは大変ですね。映画産業の衰退で、時間をかけて実力ある先輩から技術を継承することができませんから不利です。しかし現在の根本問題を映画で表現できるのはやはり若い世代ですから、制約を打ち破って見る側の背筋をしゃきっと伸ばしてくれる作品を作ってください。女性の監督に期待ですね。

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ハルヒマン