「砂上の法廷」東京裁判 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
砂上の法廷
何十年ぶりかの再見。(傑作ではないかもしれないが)労作である。
劇映画でも撮影した映像から何を取捨選択するかは悩ましいだろうが、本作では米軍の撮影した150時間ものフィルムとおよそ1万ページにわたる裁判速記録をマンションの作業場にこもって突き合わせ、さらにニュース素材なども収集して当時の歴史の流れを補強、編集するという気の遠くなるような作業の末、苦節5年かかって完成したという。4時間半という上映時間もいたしかたないと思われる。
被告らが絞死刑の宣告を受ける場面は緊迫する。日本では裁判の撮影は禁じられているので、(実際に傍聴席にいない限り)こんな場面を目撃することはまずない。しかし歴史の記録という意味では貴重だ。日本でも重要な裁判は一定の開示期間の制限を設けて映像記録を残してはどうか。
アメリカ人の弁護人が「彼らを裁くのであれば、広島、長崎に原爆を投下した者も裁かなければならない」と動議を述べるところが白眉。この裁判の核心を突いている。
佐藤慶のナレーションは重厚だが、石坂浩二ぐらいのフラットな調子の方がかえって効果的だったような気がする。
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