点と線のレビュー・感想・評価
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この尺で解決に持っていくスピード感!
約90分の尺なのになかなか手掛かりが掴めない。どうすんだと思ったらラストに向けて怒涛の展開が。そして冒頭とラストの情死シーンの対比!その場面は無くとも、破れた襖などで本物ならここまで苦悶するのだという暗示で見事な締め。マイティジャックの玉井副長が若かった。
原作は・・・面白かったはず
福岡で起きた情死事件を調べる刑事達の奮闘を描いた物語。
松本清張の名作を映画化したものです。
原作も読んでいるはずで、面白かった記憶もあるのですが、詳細は完全に失念。先日鑑賞した「砂の器」が素晴らしい出来だったので、古い映画ですがCS放送を機に鑑賞してみました。
結果、私的には面白みを感じることは出来ませんでした。
理由は幾つかありますが、時刻表を使ったトリックが映画には向かないように思います。小説なら、「読むのを中断し」、「整理し」、「考えて」・・・が出来ますが、映画ではそうはいかない。結果、ただ画面を眺めてしまう時間が増えてしまいました。
映画では高峰三枝子演じる安田亮子に焦点を当てていますが、逆に推理物の面白みを消してしまっているように思われます。
また、南弘が演じた三原刑事が、ただ正義感を振り回す熱血刑事の演出になったことも、私的にはマイナス。
当然、私的評価は厳しめです。
西村京太郎
映画全体からとても東宝の映画という匂いがします
言わずと知れた時刻表ミステリーの金字塔
全てはここから始まったのです
このようなミステリーが成立するのも時刻に正確な日本の交通機関だからこそです
他の国ならこうはいきません
大ベストセラーの原作ですから、犯人も時刻表トリックも観客は先刻ご存知の中で最後まで興味を失わずに観て頂けるかというところに力点を置いて撮られています
松本清張の原作のあの場面が、どう撮られているのか、そこにリアリティの拘りをもった良い作品に仕上がっています
志村喬、加藤嘉、山形勲、高峰三枝子
皆素晴らしい
そこに南広が一直線に物事に性急に飛び付く若さを出していて、その対比が良い演出の計算だったと思います
小林恒夫監督は元々東宝にいた人で、数奇な運命で流れ流れて東映に来た人です
なので映画全体からとても東宝の映画という匂いがします
そのまま東宝本体にいたなら、もっと活躍できた監督だったのではないでしょうか?
きっと良い企画で傑作を沢山撮れたはずの監督だったと思います
才能があっても活躍の場が与えられなく、うず埋もれてしまう人はいるものです
これも、その人の運命なのでしょうか?
全ては遠い過去になりました
監督は30年近く前にお亡くなりになっているそうです
ふた昔前、飛行機で博多に入り、夕闇が迫る頃JR香椎駅と西鉄香椎駅の間を歩いたことを懐かしく思い出しました
あの頃はまだ映画の通りの踏切があって木造の駅舎だったと思います
果物屋があったかどうかはもう覚えていません
松本清張の代表作・・
原作を大胆に改変
映画の冒頭。男女が綺麗に仰向けに横たわる心中事件から始まる。そして、映画のラストはやはり男女がもがき苦しんだ後が残る、うつ伏せ状態での心中事件で閉じられる。
原作は松本清張による、日本の推理小説史上に残る傑作中の傑作。
時刻表を使ったアリバイ工作は、九州から北海道に及ぶ広範囲に渡り、その後のトリックを使う推理小説のお手本になった。
あまりにも原作自体が優れ、更に世間からは内容自体が知れ渡っている為に、これを映像化するに及んでの脚色は逆に難しかったのではなかろうか。
脚本を担当したのは井手雅人。
元々、九州の叩き上げの苦労人鳥飼刑事が、些細な疑問を調べ上げた《点》は、やがて本庁の若手熱血感三原刑事の執念の捜査によって《線》となって繋がる。
それを原作では、2人の刑事がお互いを尊敬しあう様な往復書簡によって、犯人側の心理面を含めた詳細が明らかになる手法が取られ、最後には読者が「なる程そうなのか!」と思わせる読み応えになっている。
それなのにこの映像化では、映画の前半部分はほぼ原作通りなのですが、途中からは犯人側の捜査斑に対する思惑等を詳しく描いている為に、推理小説を読む際に「一体誰が犯人なのか?」と読者が楽しむ要素をばっさりと捨て去ってしまっている。もう企画そのものが、「誰が犯人なのかは、分かり切ってて充分…」と言った感じで動いている。
それだけに、公開当時はおそらくかなり叩かれたのではないだろうか?
何故なら、原作が一番優れている部分である、最後を結ぶ鳥飼刑事の三原刑事に宛てた往復書簡の推理で明らかになる、犯人の悲しい人生がすっぽりと抜け落ちてしまうのだから…。
実際に私自身も、映画を見始めて暫くは「これ!まじかよ…」と思って観ていたのですが…。しかし、映画が進むに連れて段々と「これもありなんじゃないかな…」と思い始めて来た。
それは犯人側の山形勲の冷酷非情な行動の見事な演技力を筆頭に、上司にあたる三島雅夫の慌てふためき振り。
そして何と言っても、この殺人計画とアリバイ工作を思い付く“その人物”。
映画の中でこんなセリフが有る。
「○がいしなければな!」
おそらく原作の中には取り入れられていなかったと思われるこの一言。
この時この一言を言われてしまった“その人物”のその悲しい人生の悲哀と、長い期間心の中にくすぶり続けていた確執・愛憎の想いが、画面上に映像によって分かり易く提示されるこの構成によって、原作よりもより浮き上がって来ている様に思えるからです。
出演者の中では山形勲は勿論素晴らしいのですが、鳥飼刑事役の加藤嘉はまさに原作にぴったりのイメージ通り。
しかし残念だったのは、三原刑事役の南広ですね。
観ていてあれでは、意地になって犯人側を逮捕しょうとひたすら躍起になっている感じにしか見えず。原作の持っているベテラン鳥飼刑事の想いを“点と線”で繋ごうとする意識が見えて来ない辺りはちょっと…と言ったところ。
サスペンスミステリー物としては、その娯楽性を含めていずれ見直されるべき作品かと思いました。
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