天使の恍惚のレビュー・感想・評価
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今ならば撮れなくなってしまった映画
一般劇場では掛からない尖がった映画を撮り続けて2012年、76歳で亡くなった若松孝二監督の42作品一挙特集上映が始まりました。多くは観ていない作品なのですが、全てにお付き合いはできないので、興味あるものから。
米軍基地から盗んだ武器弾薬を用いて、東京で爆弾闘争を繰り広げようとする若者達の物語です。こんな事を断らねばならないのも妙ですが、決してパロディではなく真正面から大真面目に取り組んだ作品です。
「よかったぁ」と感じた訳ではありませんが、虚を衝かれました。爆弾闘争の映画など今なら絶対制作出来ないでしょう。それは、配給や社会的制約があるからはなく、そこに問題意識を持って撮ろうとする人など居ないからです。50年前だって異端の映画だったでしょうが、現在の日本映画は更に遠くに来てしまいました。片田舎の民家の軒下で大昔の「ボンカレー」のホーロー看板を見つけた様な思いです。
そして若松映画らしく、いわゆる濡れ場シーンが各所にあるのですが、今観ると全くスケベっぽく感じないのが意外でした。どこか投げ遣りな場面に見えるのです。これは撮り方のせいなのでしょうか、時代のせいなのでしょうか。
そして驚いたのは、バリバリのトリオ時代の山下洋輔、森山威男、中村誠一の演奏がスクリーン上に現れた事です。皆さん、若いわぁ。映画も音楽もとにかく何かをぶっ壊したかったんだろうな。
「革命派」の本性
社会改良をうたう「革命派」が、フタを開けてみれば要するに女を消耗品としか扱わず、女の側も男の論理を内面化してチョロくやらせてやる…バカでだらしないだけのくせにもっともらしいことを言いたがる、そういう当時の「革命派」の実体をよく切り取っている。その意味では貴重な映画。
しかしまあセックスシーンの撮り方がどれもこれも下手だねえ。唯一ちょっと良かったのは、男女が背中合わせに座り込んでそれぞれ自慰をするシーンを俯瞰でおさえているショット。これも別に映画史に残るとかいうもんではないけれど。それ以外は退屈なだけ。模型を使った爆破シーンに至っては、あまりにチャチで思わず笑ってしまった。
脚本は足立正生だけど、彼に映画の才能など片鱗もなかったことがこの作品を見るとよくわかる。
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