劇場公開日 1997年11月15日

「1997年の作品なのに昭和の香りに咽せる和製ハードボイルドの隠れた名作」鉄と鉛 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.01997年の作品なのに昭和の香りに咽せる和製ハードボイルドの隠れた名作

2022年8月25日
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鑑賞方法:映画館

人探しに長けていることで知られる元刑事の探偵はその的確な仕事ぶりゆえに面倒な事件に巻き込まれ、ヤクザの組長に22時間後の死刑宣告を受けてしまう。簡単に身辺整理を済ませた探偵は人生の最後の仕事として前科持ちの兄を探して欲しいという少女の依頼を引き受け聞き込みを始めるが、彼の背後には監視役のヤクザがついていた。

『ビー・バップ・ハイスクール』が代表作の漫画家きうちかずひろが監督と脚本を務めたハードボイルド作品。レンブラントの絵画のようなずっしり重い闇の中を駆ける探偵とヤクザが織りなす贅肉の欠片もないソリッドな物語。実際に親友だったという渡瀬恒彦と成瀬正孝がボロボロに傷つきながら言葉少なに友情を紡ぐ様を捉えた奥行きのある映像がとにかく美しい。35mmフィルム上映なので四半世紀前にレンタルビデオで観た時よりも陰影が際立っていて、咽せるようなノワール感が全編に漂っていたのが印象的。思春期に観た角川映画の諸作品で仙元誠三の作家性が骨身に染みているので1997年の作品なのに昭和へのノスタルジーがガツンと込み上げてきました。

よね