劇場公開日 2000年2月5日

「【”経営者の器”今作は、相変わらずの安定した面白さを維持しつつ、山田監督(脚本)ならではの、社会的メッセージをサラリと、だが、ちくりと含んだ作品である。】」釣りバカ日誌イレブン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 【”経営者の器”今作は、相変わらずの安定した面白さを維持しつつ、山田監督(脚本)ならではの、社会的メッセージをサラリと、だが、ちくりと含んだ作品である。】

2025年7月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

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■浜ちゃん(西田敏行)のチョイ冴えない男の釣りの弟子・宇佐美(村田雄浩)は、同じ営業課のOL志乃(既に女優さんを引退された方なので、名は記さない)が飼っていたウサギを食べてしまい、気に病んで沖縄営業所へ転勤してしまう。
 一方、会社運営に悩むスーさん(三國連太郎)と一緒に沖縄へ出張することになった浜崎。宇佐美と合流し、さっそく釣りを楽しんでいたが、船が流されて無人島に流れ着く。
 スーさんは出張途中にタクシー会社の社長でありながら、自分も運転をする女性(余貴美子)と出会い、彼女の言葉に感銘を受けるのであった。

◆感想

・今作から、監督が本木克英さんに変わったが、内容は変わらず面白い。
 私は寅さんシリーズと配信で出会い(最終作は、ギリギリ劇場で観れた)、その面白さと、日本人が且つては持っていた人の情けに涙しながら観て来た。
 で、観終わった時には(正直に書くと、一作だけ観ていない。もったいないから、残してある。)とても寂しい気持ちになったが、このシリーズを見つけた時は嬉しかったなあ。

・ご存じの通り山田洋次監督は、東大卒の社会派監督でもある。故に、寅さんシリーズでも浜ちゃんシリーズでも時に、鋭い警句を作品に忍ばせて来た。
 今作では、リストラである。

・会社運営に悩むスーさんが乗った女性タクシードライバー兼社長の女性が、社内でスーさんに言った言葉が素晴しいのである。
 (沖縄の言葉は、上手く書けないので、標準語で)
 ”会社には一番早く行って、トイレ掃除をします。皆にお茶を入れます。夜は時々おにぎりを作って、出します。”
 で、スーさんは東京に戻って、社長として役員達に発言するのである。社員を辞めさせる時には、自分も・・。”と。

■最近、とても腹が立った事があるので、敢えて記す。
 私の勤める会社の同業他社で、最近、業績が伸びずに大きなリストラ策を打ち出した会社がある。だが、腹が立ったのは辞める社長や役員達の高額な報酬である。
 カルロス・ゴーンなどという愚かな男を社長にしてからこの会社は一時的にV字回復をして世間的にはゴーンは褒め謳われていたが、私達は”あれだけ、コストカットすれば当たり前だろ”と冷ややかに見ており、その後その通りに凋落していった。(そして、私の会社もごく一部の事業で関係があるので、その体質は知っていた。)一言で言えば、この会社の体質は親方日の丸なのである。
 勿論、殆どの社員の方は一生懸命に働いている事も知っている。
 だが、月中での生産計画変更(もちろん、発注先の資本金が少ない場合は、違法である。)などは頻繁にあり、酷い体質の会社だと思ったモノである。
 そして、大きなリストラ策を打ち出した時の、辞める社長や役員達の高額な報酬には呆れかえったモノである。株主総会でも反対意見が出たそうだが、否決されたそうである。どうせ”社内株主”が動いたのだろう。労組は何で動かなかったのかな。
 可哀想なのは、真面目に働いて来た労働者たちである。
 で、今作を観て「経営者の器」という言葉を想起したのである。

<今作は、、相変わらずの安定した面白さを維持しつつ、山田監督(脚本)ならではの、社会的メッセージをサラリと含んだ作品なのである。>

NOBU