月はどっちに出ているのレビュー・感想・評価
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【在日朝鮮人のタクシードライバーとフィリピンパブで働く女性との関係性を濃いサブキャラのタクシー運転手たちの姿と共に描いた悲喜劇。】
■元同級生が切り盛りする金田タクシーで働く在日コリアン・忠男(岸谷五朗)。 共に働く従業員もパンチドランカー・ホソに出稼ぎイラン人・ハッサンなど、風変わりな連中ばかりだった。 ある日彼は、母の経営するフィリピンパブのホステス送迎で新顔のコニー(ルビー・モレノ)に出会う。 ◆感想 ・今作の原作を書いた梁石日のエッセー「タクシー・ドライバー日誌」を学生時代に読んで、”過酷な仕事だな・・、”と思ったモノである。 だが、今作はそこにそこはかとないエレジーと可笑しみを融合させている点が、印象的である。 ・役者陣も、当然ながら無茶苦茶若い。 ー 岸谷五朗、遠藤憲一、麿赤児、國村隼・・。現代の邦画を代表する方ばかりである。亡き内藤陳さんまで出演している。- <だが、矢張りこの作品の魅力は、フィリピンパブのホステスのコニーを演じたルビー・モレノさんであろう。 あの独特な関西弁は暫く、耳に残りそうである。>
ショウガの姜
初めてテレビで観たときにはルビー・モレノのヌードばかりが印象に残ったが、元自衛隊員の新人運転手・安保(金田明夫)がしつこく自分の居場所を問い合わせる姿を見て、タクシー運転手になってもいいかな~などと思った末が今の俺かもしれない。今回3回目の視聴。 評論家によっては非日本人から見た日本人・・・云々といったものがあったが、それよりはタクシー運転手の日常や、世間から見下された職業といった印象が強い。キネ旬では評価が高いというのも在日コリアンを扱っているからだろうか。『GO』しかり、『パッチギ』しかり。今となると、「日本は単一民族国家」とのたまった大臣のことさえ思い出してしまう。 基本のストーリーは、母親の朝鮮の南北統一には興味もなく、女を口説くのが生きがいであるかのような忠男が大阪弁を流暢に喋るコニー(モレノ)にアタックし、うまく結ばれたものの、今度は母親が「結婚するのは朝鮮人じゃなきゃだめだ」と諭し、別れさせられる。そして、社長がゴルフ場建設の美味い儲け話に乗ったばかりに騙され、借金まみれになるといった感じ。 しかし、その基本ストーリーよりも、パンチドランカーの運転手ホソ(有薗芳記)の「朝鮮人は嫌いだけど忠さんは好きだな。一瞬、金貸してくれよ」が口癖。ヤンキーあがりのおさむ(芹沢正和)が客を殴った事件。イラン人のハッサンが整備士であるのに勝手にタクシーを運転して逮捕された事件(回送にしていればOKのはず)。妻に逃げられた運転手(國村隼)が赤ん坊を背負ってる姿。さらに、忠男が親しげに喋ってくるサラリーマン(萩原聖人)が乗り逃げしようとした事件・・・これらサイドストーリーのほうが絶対に面白い!タクシー運転手というのは前歴が様々。それに性格も個性的で面白いものだ。 梁石日の実体験からきているフィクションなのだが、原作を読みたくなってきた(タクシー・ドライバー)として。今ではこんな状況のタクシー会社はないと思うけど、昔の話を聞かされると面白いのはいっぱいあるぞ! ちなみにラストでは会社は倒産したと思われ、新たなタクシー会社に入った忠男が長野までコニーを迎えに行く。エンディングテーマ曲は憂歌団♪
ルビーモレノの関西弁の効果絶大。
1993年当時に我が国の多国籍感猥雑感を察知し端正且つ何処か緩慢な群像劇に整理した手腕を再度評す。 バラバラの個々への視線に崔洋一の優しさが滲む。 ルビーモレノの関西弁の効果絶大。 岸谷五朗 の鮮度、萩原聖人の俗物感。 キネ旬90年代邦画ワンか。
自分の立ち位置次第で、月はいずれの方向にもみえるのだ
序盤、パブのママとフィリピン人の女の子達がタクシーから降りたのは歌舞伎町のランドマークである巨大雑居ビル風林会館の前の花屋のところ 30年近く経っていても雑多な光景は今も大して変わってない 一目であそこだと分かった 風林会館の何階だったか多国籍パブに行ったことを思いだした ロシア人、スペイン人、中国人、マレーシア人・・・ スペイン人の女の子の話を鮮明に覚えている 見た目は完全に高身長でグラマーな白人女性 恐ろしく高い鼻、真っ青な瞳、白い肌、突き出た胸、張り出した腰骨、長い脚 だけど完璧な日本語で日本人のような自然な受け答えをする 聞くと両親はどちらもスペイン人だが、自分が生まれた時から日本に住んでいて、幼稚園も小学校も区立で、日本人の女の子達と一緒に遊んで育ったという 風呂にはいって沢庵でお茶漬け食べて日本に生まれて良かった~と普通に思うという だからこの見た目は着ぐるみだと思って下さい 中身は普通の日本人の女性ですと 在日の人々の物語 それは南北朝鮮の人々だけでなく、コニーのような出稼ぎのフィリピン人もいれば、ベトナム人の人々もいる、イラン人も沢山いた ポルトガル語しか話せない日系ブラジル人もいた コニーを忠男のタクシーが拾ったのは新大久保の駅のガードの下 今ではコリアンタウンとして超有名になった この頃もコリアンタウンの色彩はあったが、もっと多国籍でエクアドル人の立ちんぼが出没すると話題になっていた 劇中でもそれらしい二人が登場する 1993年、バブル崩壊がいよいよ深刻化してきた頃 日本の繁栄はピークアウトしたのだ 眩しい程の繁栄が覆い隠していた水面下の物事それらが一斉に噴出し始めた頃 こうした多国籍化した日本が見えてきた頃の物語だ 今は日常風景となった 東京だけでもなく、北関東の工場や倉庫の街の話でもなく、日本の地方都市どこでも見られる事になった 月は夕闇が訪れて輝き始めるのだ 月はどっちにでている 自分の立ち位置次第で、月はいずれの方向にもみえるのだ 在日問題、移民問題も同じだ 日本人の差別意識にだけ?そうじゃない 在日側の被差別意識も同じなのだ 日本人を激しくヘイトする人々 歴史問題を真偽が怪しいと明白になった物事を何時までも千年も恨む人々 日本人と融和している人々、そうしようと努力する人々、様々だ 東京タワーが何度か写る 青い夜空にオレンジ色の照明に輝く東京タワーと黄色い満月の美しさ タワーは東京の繁栄を、月は在日をシンボルしているのだ ラストシーンは塩尻から帰り、首都高の浜崎ジャンクションの手前辺りから見える東京タワーの遠景だ コニーも忠男もやっと東京に帰ってきたという安堵の心が映像に滲み出ている 二人にとっても東京は故郷になっているのだ 素晴らしい演出だ 月は太陽の照り返しで輝く 日本が没落すれば月もまた輝きを失うのだろう 理解しあえたらいい、できなくても力を合わせて日本で住み続けて行くほかないのだ もし忠男とコニーが結婚したなら、2020年の今、その子供はもう成人して20代半ばだろう そしてまたこの二人のように恋愛をして結婚して子供を産むのだろう この日本のどこかで 公開から30年近く経って、本作の持つメッセージはより明確に見えるようになったのではないだろうか? 傑作なのは間違い無い
走り
この作品が公開された1993年、私は10代でしたが凄く話題になったことを覚えています。それにフィリピン出身の女優さんがヒロインを演じるのも恐らく初めてではなかったでしょうか。現在在日を描いた作品は沢山ありますが、もしかして今作がその走りなのかもしれません。この後に「パッチギ」「血と骨」が作られたと思うとなんだか感極まります。作品は当時の緩いながらも熱量が高い空気感がフィルムに漂っていました。今となっては普通の事ですが、当時としては珍しかった外国人のコミニュティや居場所を描いた先見性の高い作品だと思います。
90年代の在日朝鮮人を取り巻く環境
力強い人間の生を感じる映画でした。 在日朝鮮人の二世三世を取り巻く世界。この中で孤立したら悲惨なのかな…ムカつきながらも周りの人間の中でうまく生きてくことって大事なんだと思える映画でした。 フィリピン人のコニーがとにかく可愛すぎてたまらなかった。お別れのシーン、笑顔で扉を閉めるコニーに涙が出ました。
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