大菩薩峠(1966)のレビュー・感想・評価
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禁煙にも効くらしい殺伐とした異様な迫力
カラリとしたユーモアと反骨精神に満ち満ちた岡本喜八監督にしては珍しい、主人公像がとにかく陰惨な時代劇。というのも中里介山の有名な大長編小説の映画化であり、おそらく社員監督として東宝から任された企画だったのではないか。過去には片岡千恵蔵や市川雷蔵主演でも映画化されている。
にしても、仲代達矢演じる主人公、机龍之介はとんでもないクソ野郎で、一見ニヒルな男前だが、趣味は辻斬りだし、弱みにつけこんで他人の妻を自分のものにしたり、とにかくひどい。そのひどい主人公の流浪の果てがどうなるのか、という物語のはずだが、原作も未完だし、前後編のはずが突然後編の製作が中止になり、完全な尻切れトンボで終わってしまう。机龍之介を仇と狙う加山雄三なんて、待ち伏せしたまま待ちぼうけで放置されたまま。
じゃあどうやって終わらせるか? 修羅と化した机龍之介が、斬って斬って斬りまくる大チャンバラシーンが延々と続き、ほとんどトランス状態で終わっていくのだ。ジャンルは違うが後の『ジャズ大名』を大きく先取りしていたともいえる。
あまりに主人公が非道すぎて「タイタス・アンドロニカス」並みに笑ったりもしてしまうのだが、異様な暗さが際立つ異色作となった。ジム・ジャームッシュは禁煙するためにこの『大菩薩峠』を繰り返し観ることで禁断症状を乗り切ったらしい。タバコは吸わないが、なんだかわかる気がする。
狂気…ってほどでもなかったかも
(2018/5 ラピュタ阿佐ヶ谷で2回目)
1回目をみたのは10年以上前で、記憶を掘り起こして最近感想を書いたのだが、ラピュタ阿佐ヶ谷でやるというのでそれで2回目をみた。
最初みたときと全然違うところが気になった…。岡本喜八は漫画的な人物造形を作るのが上手いのかなと思った。行商人のおっさんが魅力的だったり、爺さんを斬り殺される娘さんが可愛らしかったり。
主人公の敵役である、主人公が斬り殺した剣士の弟との対決を煽っておきながら、それを全く見せずに終わるのは、改めてみるとそりゃないよ!という気分に。
それでもキャラクターの魅力で最後まで飽きずにみれます。
↓1回目感想
まったく共感できない机竜之助を案内役に観客を狂気の領域に連れて行くライド映画。破綻しているように思えるところも含めて好き。
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