大悪党のレビュー・感想・評価
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ブラックジャックかっ
映画と言うのは2種類ある。一つは、主人公が最初から最後まで一貫したキャラであり続けるものを。もう一つは、主人公のキャラが途中で変わってしまうものだ。あの時、あの感じだった主人公が、たった一時間かそこらの間に、こんなふうに変わってしまって・・というのが、映画の中で見られるのは。見ている途中でも、見終わった後でも、不思議な感じがするものだ。そして、この映画もそんな感じだった。
この映画で一番面白いのは、絶望的になった女性の沈んだ雰囲気と、その直後にしゃべりだす弁護士の楽しくてたまらないといった生き生きとした表情だ。この対比がとても面白いものだった。最後にどんでん返しみたいなものがあって、主人公が大ピンチに陥るかと思ったけど、それもなくて。まあ、何ていうか、安心して見られるというか。そういう映画だった。前半がひどい。始まり方で、正直、見てるほうも心をかき乱されたので、後半はこんな感じでバランスが取れて良かったのかもしれない。
増村保造の数ある映画の中で、最も痛快な作品であろう。いや、唯一か?前半部分がちょっとアレなので、これは配信されることは永久に無いかもしれないな。DVDを買いましょう。
ちょっと気になって調べてみたけど、ブラックジャックが始まったのはこの映画の五年あとですね。絶対キャラクター作りに影響してると思うな。
スリリングでドキドキ感のクライムサスペンス映画
街のヤクザ・安井(佐藤慶)に卑劣な手段で脅迫された専門学校の生徒・芳子(緑魔子)が救いを求めた弁護士の得田(田宮二郎)は、殺しのテクニックを教えてその弁護もする、法律の抜け穴を衝くヤクザ顔負けの大悪党。スリリングでドキドキ感のクライムサスペンス映画、 昭和43年大映製作、増村保造監督作品。
弁護士である円山雅也の原作「悪徳弁護士」を、「黒の報告書」(昭和38年)の石松愛弘と増村保造が共同でシナリオ化。撮影は増村作品「妻は告白する」(昭和36年)、「兵隊やくざ」(昭和40年)などの小林節雄。
その昔、この映画を初めて映画館で観た時「法律には“一事不再理”という原則があって、同じ事件は二度と裁判しない」という事を知った。
田宮二郎、緑魔子、佐藤慶は適役で、法廷シーンでの得田弁護士の鮮やかな弁論と、無罪を獲得した芳子が最後に口にする言葉にびっくり。何度観ても飽きない。お薦めです。
増村作品に、田宮二郎は「黒の試走車」「女の小箱・より 夫が見た」などに好演、緑魔子は「大悪党」の翌年、江戸川乱歩・原作の問題作「盲獣」に出演している。
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