ソナチネのレビュー・感想・評価
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映画のブラックホール
この映画は「ありがちなヤクザ映画のストーリー」を採用しています。ストーリー自体に特殊性はありません。それによって監督北野武の個性が浮き彫りになるように作られています。
またこの映画の特徴は、料理に例えるなら「食材はひと通り集めて包丁も入れたが、火だけ入れてないので食べれない状態」の映画だと言えます。監督がわざとそのようにしたのであり、この映画はヒットしませんでしたが、観た客は度肝を抜かれました。「火が通ってて食べられない。ほかにこんな映画観た事ない」という衝撃でした。ひとことで言えば、絵が陳腐なのです。火が通ってないので。焦げ目も香ばしさもありません。火が通ってない事をどうするのか?というと、何十年も放置しておけば作品は時間と共にゆっくりと燃焼する事になり「嘘臭さのない、本当の火が入った状態になるだろう」となります。つまり年月によって自然な香ばしさが出てきて、いぶし銀のビンテージ感が出てくるはずです。あれからもう28年経ったので、今見るとそのようにとても味のある映画に見えます。これは監督の予想通りです。しかしリアルタイムで観た当時はとにかくそんな、スクリーンから感じられる監督の意図が前代未聞でぶったまげました。北野武は絵ヅラが陳腐である事を屁とも思っていません。
そんな映画創作というもの、そのものに対する実験性がこの映画にはありました。
乾いた暴力
アート性を強く感じた
美しかった
絵画を観ていてるかのような色彩と構図
アート性を強く感じた
アルル時代のゴッホの絵画の様な明るい光線と色彩
ゴーギャンのタヒチでの絵画を思わせる南の島の強い光線と鮮やかな色彩
主人公と親しくなる女は乳房を出して立つ
有名なゴーギャンのタヒチの女の絵のモチーフだ
ただ独り白いシャツを最後まで着通す主人公
ラストシーンでそれは赤く染まるのだ
冒頭の銛に刺され貫かれたナポレオンフィッシュ
空は赤く飛び散る
ナポレオンとは親分のこと
それを銛で突き殺す
血で赤く染まり、血しぶきは頭上に飛び散る
つまり冒頭で物語は完結しているのだ
しかしそれでは映画にならない
だから100倍に希釈して私達観客にこういう事なのですと説明していたのだ
そう思えば全て得心がいった
エンドロールが終わり、監督の名前が出たあとに写されるのはひまわりと南の島の浜辺
監督が種明かししているではないか
海外でこそより高く評価されるのも当然だろう
久石譲の音楽のクオリティが大変に高い
本作のアート性を高め更に気品すら与えている
人間らしいやくざ
やくざの抗争。ドンパチ以外に
仲間と一緒にはしゃいだり、
微笑ましいシーンが沢山ある。
怖いから撃っちゃうんだよ。
あんまり死ぬの怖がるとな
死にたくなっちゃうんだよ。
最後のシーン、このセルフ思い出した。
たけしさんの目のギラギラ感がすき。
セクシーさもあり、かっこいい。
拳銃撃つ時、隠れたりせずに直立不動で撃つのが
印象的だった。プライドなのかな。
相変わらず、あっという間に次々とひとが死んでいく。
あっさりと。
車内のラジオが、寄席か漫才なのが芸人らしさを出しているなと思う。
今回は朝焼けや、青空、海など
ビューティーカットがいくつかあった。
虚しく儚く美しい
2-3回観た映画ですが、映画館では初鑑賞。しかも10年以上ぶりに観たので、新鮮な気分で観れました。
とはいえ、伝わってくるメッセージは変わらず。「マジ人生無意味、虚しい。もう死ぬしかない」。
死ぬことしか考えていない人が撮った映画なので(バイク事故ってこの直後くらいですよね?)、北野武と同じく虚無に苦しんでいる人が観たら気持ちが死に傾き易くなるヤバ映画でもあります。
前観た時は思い切り食らってしまいなかなか消化できなかったのですが、改めて今観直すと、印象に残るのは飛び抜けた美しさでした。
銃殺された子分を埋めるオレンジと黒だけの夕焼けのロングショットや、夜の花火の打ち合いのブルーがかった薄明かりなど、絵画のような美しさで、どれもすぐに消え去ってしまう儚い美しさだなぁと感じます。
長々と描かれる大人の夏休みも、美しく儚い。
無意味・虚無には、永遠が失われる悲しみがある程度関係していると思います。無常の悲しみがあるからこそ一瞬の美しさを切り取りたい、という心性が働くのかもしれない。本作は沖縄が舞台だけど、雄大な自然みたいな生命力に溢れた永遠性を象徴する美しさ描写はないですし。
かなり高レベルの鬱映画だと思うのですが、世間的にはさほど鬱映画として認識されていない印象があります(思い込みかもしれないかど)。それは、この飛び抜けた儚い美しさが理由かもしれません。
刹那い
音楽と映像があって映画なんだなぁと思った映画。
たけしの表情や映像、音楽とを思い出すと胸の奥が重くなり、涙が出そうになる。
昔は何故ラスト自殺したのだろう?と思った気がしますが、見直したら必然というか、映画全体が死に向かってるような感じでした。
たけしの死生感
かなり好きな映画です。
言葉や描写でメッセージを伝えるというよりは 音楽と情景、ストーリーの展開で
この映画のメッセージらしきものが浮き出す感じ。
現実的でありながら幻想的
とても北野武監督らしいです。
数々の残虐シーンがあり、特に冒頭の水責めシーンのリアルさは鳥肌がたちます。
しかし、海辺で最後のバカンスを楽しむ姿はサンクチュアリのような永遠感もあります。
この映画で監督は現実の死というものを伝えたいor表現したかったのだと感じます。
話は少しずれますがかつてテレビでは
飛び降り、暗殺、爆弾等、人が死ぬ瞬間や人が死んだ生々しい映像が流れる事がありました
多くのクレームによりテレビでは一ミリたりとも血は写らず 人が死ぬ瞬間、人が死んだ姿は映さなくなりました。
確かに死に対して嫌悪感を抱くのが人間として普通です。
しかし、完全に死を拒絶したいと考える人は果たして正常な精神を持つことが出来るのでしょうか?
映画の中で【死にたくないって思いすぎると死にたくなっちゃうんだよ】という台詞が物語っていると思います。
当時新興宗教ブームだったのも要因のひとつかと思いますが
北野武監督は現代人が抱える 現実感の喪失という病へのワクチンとしてこの映画を作ったように感じます。
多くの方に見てもらいたい映画です。
ヒリヒリするかんじ。
死について 生について
非現実感
雰囲気が良い
ズシリと来る
最も難解ではある
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