「2時間サスペンスの原点のような映画」ゼロの焦点(1961) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
2時間サスペンスの原点のような映画
数ある2時間サスペンスのスタッフはロケや設定、編集技術をこの映画から吸収しているに違いないと思えるほどです。
ストーリーは難しくないし、犯人当てだって簡単。松本清張作品の中でも推理の醍醐味を味わう小説ではなかったと思いますし、それよりも犯人の過去やその過去にまつわる悲しい人生の登場人物をクローズアップした社会派作品です。戦争についての映像は一切出てこないのに、日本の敗戦によって悲惨な運命に翻弄される女性たちが日本海独特の暗さと重い空気に溶け込んでゆく。「戦後は終わった」と言われた昭和30年代にあっても、その暗い陰は人々の脳裏に根付いていたのです。過去を隠さねばならなかったというテーマは森村誠一の『人間の証明』にも通じますが、今の時代とは違い、犯人側の背負った重い運命にも涙せずにはいられませんでした。
舞台は金沢を中心とした石川県。今冬は久しぶりの豪雪となりましたが、45年前の豪雪の映像には驚きました。しかも主人公の女性(久我美子)はハイヒールで雪道を歩くという無鉄砲ぶり。「だから都会の女性は・・・」などとブツブツ言ってしまいそうになりましたが、彼女は新婚7日目。新郎は広告会社金沢支店所長という肩書きでしたが、「ブーツを忘れずに」との忠告もする暇がなかったのだと思われます。しかも夫が謎の失踪という災難に遭ったので、気が動転していたこともあったのでしょう。手掛かりを探すため、今は無き路面電車で寺町3丁目へ向かい、得意先の社長宅に到着する。社長の大邸宅は『野性の証明』と同じく成巽閣だ。そして、これも今は無き北陸鉄道能登線に乗って能登半島のヤセの断崖へ。荒れた冬の海から押し寄せる白波も印象的ですが、ラストシーンにも登場する断崖から見た日本海には、どんよりと曇った空から一条の光が差し込んでいるという絶妙のタイミングを狙った効果がありました。
事件の語り手のようでもある主演女優の久我美子よりも、高千穂ひづると有馬稲子がとても良かったです。特に、実はこれが真相だという回想シーンにおいて、有馬稲子の全てを許すかのような優しい目には泣けました。若き日の加藤嘉や西村晃も熱演しています。
しかし、雪が降らない太平洋側の人がこの映画を見ると「北陸には住みたくない!」と思うこと間違いありません。それほど暗いのです。これは雪国の人間が自虐的に楽しむ映画。そして暗さから脱却し明るい性格になろうとする再生のための映画なのかもしれません。
【2006年2月映画館にて(リバイバル)】
kossy さんのお勤め先の「広告看板」、わかりませんでしたー。リメイク版のほうですねきっと。
DVD返却してしまったのでわからず仕舞い、
シキュウ デンポウニテ オシエラレタシ」
朝風の静けき浜にわれ立ちて
砂の冷たく足指に抱く
北陸の黒き雪雲垂れ込めて
あわや触れなん鉛の海に
kossy さん
徳光パーキングで作った短歌です、恥ずかしながら。
あれは人生の一番苦しい時期。そんな頃通った金沢なので、金沢は僕にとって大切な町。忘れられない土地です。
これからもよろしくお願いします。
きりん
どんだけ筆が立つんですか(驚)
kossy さんパソコン早すぎです。アップ早くて腰抜かしました😱
⇔ 運転はゆっくりお願いしますよ、金沢のご仁はレーンチェンジがせかせかしとるし(笑)