「相米慎二にしか撮れない唯一無二の一作に、カ・イ・カ・ン!」セーラー服と機関銃 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
相米慎二にしか撮れない唯一無二の一作に、カ・イ・カ・ン!
監督の相米慎二、主演の薬師丸ひろ子、角川映画にとっても代表作の一本。
長澤まさみや橋本環奈主演でリメイクされた事も記憶に新しい。
名作ではあるが、今見るとツッコミ所満載でシュールであったり、相米監督のアート精神が反映されたりと、何とも不思議な魅力を持った作品でもある。
まず、ツッコミ所。
女子高生がヤクザの組長を継ぐ…という話の根本そのものを突っ込んだら埒が開かないので、
例えば、泉と佐久間のロマンスやキス。大人の男性への憧れと言えば聞こえはいいが、ズバリ言えばセーラー服女子高生と中年男性のロリコン的LOVE。これ、名作だから何も言われてないようだけど、昨今のアホ設定の先生と生徒の禁断LOVEと何が違うのだろうか。
泉が大仏の上であぐらをかいたり、バスタオル姿でゴロゴロしたり、他にも意味不明な怠惰的なシーンがちらほら。
薬師丸ひろ子の直球のアイドル映画だと思ったら、一風変わった作風に戸惑う事間違いナシ。公開時、絶対賛否呼んだだろう。
その仕掛人である相米演出。
代名詞的長回しやロングショットの多用など、それが単なるアイドル映画に留まらない才気を見せる。
この時の薬師丸ひろ子の演技は拙い。『~卒業』で橋本環奈の演技がフルボッコに叩かれたが、演技力にそう変わりはない。
決定的に違うのは、薬師丸ひろ子の魅力を充分引き出し、女優としての成長をドキュメントのように取りこぼさず、それでいてちゃんと薬師丸ひろ子のアイドル映画として、恋を知って少女が一歩大人になる青春ドラマとしても確立している点である。
アイドル映画であり、青春映画であり、実験的アートフィルムであり、
説明不要のあの名台詞・名シーン、名主題歌に酔いしれる。
相米監督にしか撮れない唯一無二の一作。
たがらこそ、カ・イ・カ・ン!なのである。