劇場公開日 1974年6月29日

「婚外性行為の悲劇」青春の蹉跌 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0婚外性行為の悲劇

2019年8月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

萩原健一の追悼特集で日本映画専門チャンネルから録画しておいたのでみた。原作者である
石川達三は50年以上も前から現在に至る性倫理の崩壊を憂いていた。婚外性行為の相手の男女が傷つきあい、取り返しのつかない悲劇の連鎖になるのは、そうした意図が小説的手法で表現されたものだろう。だが現在の人にはそうした意味さえわからなくなってしまっている。婚外性行為は堕胎への心痛や殺人へと至らず、シングルマザーや、赤ちゃんポスト、そして年間20万にも達するような堕胎へと、どこまで男女平等を目指そうとも人間はモノ化されていく。しかし、萩原健一演ずる男は、途中までは桃井かおり演ずる悲劇の女に対してどこまでも優しい。途中までは。
檀ふみ演ずる女とは政略結婚のような企てもあるが、愛情もあるにはある。やがて、萩原にも檀にも、桃井に対して起こした悲劇がやってくる瞬前に映画は終わるが、現在の日本の現実は、できたら堕胎でさようならか、でき婚である。

Takehiro