「水谷豊=24歳のメモリアル」青春の殺人者 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
水谷豊=24歳のメモリアル
1976年。長谷川和彦第一回監督作品。
原作は中上健次「蛇淫」
ストーリーは小金持ちの両親を殺して海に遺棄した青年の実話を元にしています。
1976年だから成立した映画。
親殺しの描写が、今ならあり得ないほど、リアルです。
本気で包丁でお腹をズブズブ突き刺す、何度も何度も突き刺す。
血溜まりに横たわる父親の死体。
見に来て驚いた母親は躁状態になり、浮き浮きと、
「整備工場を売ろう!!土地だけで2500万、スナックも売ろう!」
「そして15年。時効が来るまで、2人で逃げよう・・・」
「指図すんな!!」
順(水谷豊)は、無理心中を計ろうと、ナイフで襲ってきた母親(市原悦子)まで、
殺してしまう。
一人息子の順を愛する両親は、与えたものを取り返す癖がある。
車を買い与えたのに、気に入らないと、取り上げる。
スナックも買い与えて息子を店長にして、可愛い娘ケイコ(原田美恵子)を雇う。
順とケイコが恋仲になると、過去を探って、ケイコと別れる事を強制する。
ケイコの悪口が、父親殺しの動機。
それにしても、原田美恵子は惜しげもなく裸になる。
健康的で力強く美しい。
(今の女優には、真似できまい)
母親役の市原悦子は演劇調の大袈裟な芝居・・・怪演だった。
水谷豊はとても自然な演技。
後と先を考えず怒りに任せて親殺し・・・親殺し、の恐ろしさに震えることも、
怯えることもなく、冷静に死体を毛布でくるみ、重しを付けて、埠頭から遺棄する。
水谷豊、24歳。
原田美恵子、17歳。
長谷川和彦、30歳。
音楽は「ゴダイゴ」
(ミッキー吉野の曲は英語のカントリー風。やけに安っぽい。
(既成の曲の方が良かったと思う)
『太陽を盗んだ男』1979年と、
『青春の殺人者』1974年。
この2本しか監督作のない長谷川和彦。
この映画も強烈な印象を刻む。
中上健次の土着性が、成田空港建設反対運動とも、よくマッチする。
日本のヌーベルバーグだ。