「旧劇の新しさ」REVIVAL OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に ate2さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0旧劇の新しさ

2021年1月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

新劇場版を観た後で、TV版を改めてみてみると、絵が古いというのもあるが、内容的にも古いだけでなく、かなりの部分で薄っぺらさを感じる。

だが旧劇となるとこれが逆転する。旧劇の怒涛の表現の前では、新劇のほうが古く、薄いと感じる。

内容も凄まじいが、その凄まじい表現を通して伝わってくるものがまた凄まじい。

現実の厳しさと、その厳しさの前にあまりにも愚かで、なす術のない人生。それをこんなに赤裸々にぶちまけられて、突き付けられて、嘲笑われる。生きることへのおびえや諦めを誤魔化している醜さを暴き出されて不快でないはずもない。

でも人間のしてきたことを見ないで、簡単にきれいごとや優しさを歌う映画とか表現というのは好きになれない気持ちというのはよくわかる。そういう刹那の癒しに慣れてくると、汚いもの、厄介なもの、醜いもの、弱い者から目を背けることが当たり前になる。

コロナウイルスが蔓延する現実が暴き出したのは、結局そういう人間たちの姿。

ほとんど何にも言わないのに、こんなにも暴露的ですさまじく冷たいのに、

それでも何より強く、この映画から滲み、あふれ出しているものは温かい。

悩みや苦しみ、虚しさや怒りから逃れられない、目を背けない人ならそれを感じるだろうと思う。そんな人達の心をいくばくかこの映画は慰めることだろうと思う。

仏教に大慈、大悲という言葉があってこの二つは同じだという。関わりの無い他者の悲しみからも目を背けず、鏡のように直視するその心だけが慈しみなのだ、というのだろう。

私たちは仏様ではないから、その厳しくて暖かい心は共有できない。だがこの映画から溢れだしているものを見ていると、その気持ちを感じることくらいは、できるのだなと強く思う。

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ate2