昭和残侠伝 破れ傘のレビュー・感想・評価
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演出過多
健さんがノリにのってる。
今までも、本人か役なのか分からないくらい不自然さが無かったのだけど、今回はそれに輪をかけて殺意や憤怒の目が違った。
刀を携え対峙する際の佇まいや、腹の括り方にまで真実味を感じる。
この時期、何か画期的な変化でもあったのだろうか…シリーズ最終章にして、完成形の花田秀次郎を見たような気分だ。
物語は相変わらず込み入っている。
そしてべらぼうに展開が早い。
マンネリ解消と言われればそれまでの話ではあるが…この作品には早すぎるような気がする。秀次郎に共感できないわけではないが、先を急ぐあまり、上辺だけなぞるような印象だ。
結局は殴り込むんだろ?
いや、そうなのだけど…そこが見せ場じゃないはずなのだ。
なので、お話的には深みが足りない。
若かりし頃の北島三郎さんとか、ちょっとお目にかかれない映像もあるのだけれど、東映演出の定番がこの頃には確立されていたのかと、呆れてしまう。
何十年この演出法をなぞってきたんだ、この連中は。伝統を守るのはある意味大事な事ではあるけれど、変化と進化を放棄するのとは別の話だ。
そして、まあ、その代表とも言えるのが今回のヒロインだった。
まぁ、くどい。
まぁ、くさい。
立派な大根役者だった。
演出なのか本人発信なのかは知らんが、秀次郎と再会する時の距離感が…違う。
お前の中にある十何年の溝はそんなに軽々と縮められものなのか…?
今までのシリーズでは有り得ないようならシーンだった。
この作品自体が近代化の波に飲み込まれつつあり、最後にして良かったと思われる。
これ以降はおそらく恥の上塗りだ。
そして
やはり
鶴田浩二さんが素晴らしい…。
あの死に様。
目が話せなかった。
海外の俳優で死に方上手いなあと思う人は何人かいるんだけど、日本人で息を呑む程見入ったの鶴田浩二さんが初めてだ。
見開いた目から一切の情報を感じない。生命活動が遮断されてる。彼の時間は停止したのだ。…見事だった。
この人は、日本の俳優史に変革をもたらしたんではなかろうかと推察してしまう。
それくらいの才能とセンスに溢れてる。
もっと早くにお会いしたかった。
やっと見終わった「昭和残侠伝」
見応えはあった。
今の価値観とはいちいちズレてはいるが、高倉健、池部良、鶴田浩二、富司純子に出会えたのは素敵な出来事だった。
「死んでもらいます」が1番好きかなあ。
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